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DX(デジタルトランスフォーメーション)時代の人財育成(後半)

2020.0309 文部科学教育通信掲載

2月3日に、三菱総合研究所にて、DX時代の人財育成に関するセミナーで、NPO法人人間中心設計推進機構理事長 篠原稔和氏、株式会社三菱総合研究所デジタル戦略グループ主任研究員清水浩行氏と共に登壇し、人間のOS(学ぶ力、創造力等)のアップデートについて講演を行う機会を頂戴致しました。2回に分けて、その概要をご紹介します。

前半では、OSをアップデートする方法と、OSをアップデートすることが大切な理由を紹介しました。後半では、OSをアップデートする効果をお伝えします。

 

OSのアップデートの効果

OSをアップデートには、3つの効果があります。

  • 圧倒的な当事者意識が醸成される

ダニエル・ピンクの提唱する主体性 モチベーション3.0を手に入れることができます。

  • 前例を踏襲しない学びが可能になる

過去に縛られない思考の柔軟性と創造力が高まります。

  • 多様性を活かす共創力が高まる

多様性を活かす共創に適した環境を創ることが容易になります。

 

1.圧倒的な当事者意識

OSをアップデートすると、自己の内発的動機 動機の源を知ることができます。動機の源とは、あなたがやりがいを感じる理由であり、あなたを突き動かす大切な価値観のことです。

仲間と一緒にプロジェクトを成功させた時でも、嬉しい理由は様々です。競争に勝ったことが嬉しい人もいれば、みんなで頑張れたことを喜んでいる人もいます。同じように喜んでいても、実は、喜んでいる理由が、一人ひとり違います。

皆さんはご自身の動機の源を知っていますか。認知の4点セットを活用すれば、動機の源を簡単に知ることができます。あなたは、自分の動機の源を知らないと思っているかもしれませんが、実は、あなたの心は、あなたの動機の源をすでに知っているからです。私たちは、大切な価値観が満たされている時に、ポジティブな気持ちになり、その逆の場合、ネガティブな気持ちになります。とても楽しい時、どのような価値観が満たされているから楽しいのかを自分に尋ねてみてください。何度か、自分への問いかけを繰り返していると、あなたの動機の源が明らかになります。

動機の源につながるビジョンを持った時に、人の潜在能力は最大化すると言われています。

創造力も、問題解決力も高まります。動機の源は、課題を発見するセンサーの役割を果たします。動機の源の説明は、皆さんもよく知っている企業の起業ストーリーに照らして説明すると一番わかりやすいので、グーグルを事例にご紹介したいと思います。

グーグルの共同創業者ラリー・ペイジと、セルゲイ・ブリンは、テレビ広告と同じように、高い広告料を支払った企業の情報が、検索結果の上位にくる検索エンジンのビジネスモデルに大きな疑問を抱きました。

二人とも科学者の家に生まれ育ち、スタンフォード大学で研究をしていたので、ラリーとサーゲイは、情報がお金で操作される検索エンジンの世界は間違っていると思いました。

例えば、病気のお母さんのために薬を探しても、高い広告料を支払った薬品会社の薬を選んでしまう検索エンジンでは、役に立たないと思ったのです。

当時、誰もが、疑問を持つことなく、当たり前に使っていた検索エンジンを課題だと思う背景に、彼らの動機の源がありました。彼らが信じている大切な価値観があったからこそ、彼らは、「広告料をもらわないで、どうやって検索エンジンを稼働させるのか」という投資家の批判にも負けず、民主的に検索結果が一覧として表示されるグーグルを誕生させることができました。

動機の源につながるビジョンを実現するために最善を尽くしている時、人のクリエイティブテンションが最高に高まると言います。クリエイティブテンションとは、ありたい姿と現状のギャップを埋めたいという強い思いで、動機の源とありたい姿がつながっている時に、人の創造力や問題解決力が高まる理由でもあります。

             OSのアップデートに活用する認知の4点セット

 

2.前例を踏襲しない学び

前例を踏襲しない学びを実践するためには、自分の境界線の外に出る必要があります。そのためには、自分の知らない多様な世界との対話を通して学ぶ力が大切になります。そこで役立つのが、認知の4点セットです。他者の世界にある経験、感情、価値観を聴き取ることで、自分の知らない世界をより深く学ぶことが可能になります。

そのために最も大切な力は、感情をコントロールし、評価判断を保留にする力です。すぐに判断する習慣を少し見直す必要があります。

 

3.多様性を活かす共創力

創造的なチームには、心理的安全性が重要であることは、グーグルのアリストテレスという研究で広く知られるようになりました。

心理的安全性とは、周囲に素の自分を見せることを、自分自身が受け入れられる状態であり、同時に、素の自分を見せても、周囲の人に受け入れられる安心感のある状態です。

認知の4点セットで経験を振り返るリフレクションができる組織は、自分の内面、感情までも開示しており、心理的安全性を保ちやすいです。

多様性を活かすためには、オープンでフラットな文化を醸成することも大切です。文化を創るのは難しそうと思われるかもしれませんが、そんなことはありません。文化を支えるのは、一人ひとりの行動様式です。誰もが、理念を共有し、理念を体験する行動様式をとっているのかが、文化を創る上で決め手となります。

そのためには、誰もが、ありたい姿を認識し、自分の言動を振り返り、あるべき姿に近づこうとする努力が欠かせません。リフレクションは、文化を創る際にも、欠かせないのはこのためです。

 

対話から共創へ

共創では、自己と他人の思考に境界線がなくなります。この状態になると、多様性が化学反応を起こすことが可能になります。

誰もが、クリエイティブテンションを持ち、ビジョンを自分事化し、フラットでオープンで、心理的安全があり、評価判断を保留にして多様な世界から学べるチームになると、共創力は高まります。そのためには、リフレクションや対話力が欠かせません。

OSをアップデートするために、認知の4点セットを活用したリフレクションと対話を皆さんも、ぜひ、実践してみてください。

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