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彼女の時代

2019.09.09文部科学教育通信 掲載

アリババが主催する2019女性起業家カンフェレンスの基調講演を行いました。「彼女の時代:彼女たちが創り出す世界」というコンセプトで開催されたカンフェレンスは、事業だけでなく、女性が創り出す家族、コミュニティ、会社、商品など、多種多様な世界観で、女性の創り出す世界に注目したものです。新しい創造に踏み出す女性たちの勇気とインスピレーションをシェアし合うことで、お互いをエンパワメントすることを狙いにしています。

 

カンファレンスの趣旨

世界の女性リーダーの知見をシェアする場を提供することで、女性が社会や会社の意思決定に積極的に参加し、新しい価値の創造に主体性と自分らしさを発揮できる世界に貢献することを目指し、このコンフェレンスは、2015年から毎年行われているそうです。そして、日本で初めて開催されたカンフェレンスでは、アリババの創業者ジャック・マー氏のいる広州の会場をカンフェレンスシステム繋ぎ、行われました。

 

ジャック・マー氏の信念

アリババは、女性の活躍が進んでいる企業としても有名です。IT企業には珍しく、創業からしばらく、女性比率は49%だったと伺いました。現在は、規模が拡大し、女性比率は、33%。しかし、女性管理職比率は34%を維持しています。

 

創業者ジャック・マー氏は、女性を選ぶのではなく、女性に選ばれる企業になることを目指すと言います。彼は、あと数週間で経営を後身に譲り、これからは、女性活躍支援や教育の発展に、自分の時間とエネルギーを注ぐ予定です。彼が主催する最後のカンフェレンス、そして日本で初めてのカンフェレンスで、基調講演をさせていただいたことは、とても貴重な思い出になりました。

 

ジャック・マー氏への質問の中でも、「政治家について女性の比率を提示するクォーター制

についてどう思うのか」という質問に対してのジャックの答えでした。今に、「男性のクォーター制、つまり男性の比率を高めないといけないのではないか」という議論が始まるだろうという将来予測を語りました。女性の持つ顧客視点、コミュニケーション力、変化を望むマインドセットなどが、社会をより良い方向に向かわせるというジャックの信念は、とても強く、彼の話を聞きながら、私を含めて日本の女性たちも大変大きな勇気をもらいました。

 

基調講演

基調講演では、以下のようなお話しました。

アントレプレナーの姿

アントレプレナーという言葉で、アップルを創業したスティーブ・ジョブス氏や、アリババを創業したジャック・マー氏をイメージする方も多いと思います。しかし、アントレプレナーは、ビジネスパーソンだけに当てはまる言葉ではありません。ノーベル平和賞を受賞したマザー・テレサも、アントレプレナーです。インドの修道院で豊かなこどもたちの教育に従事していたマザー・テレサは、修道院の外の街に暮らす貧しい人たちを助けるために生きたいと強く思うようになりました。しかし、バチカンは、すぐにテレサの要望を受け入れた訳ではなかったそうです。何度も、お願いをし、許可をももらったテレサは、貧しい人々を助ける活動を始め、やがて、「神と愛の宣教者の会」は、世界123カ国に、四千人のネットワークを持つ宣教者の会に発展します。アントレプレナーは、自分のアイディアと行動で、世の中にポジティブなインパクトを与える人、そう捉えると、マザー・テレサも、偉大なアントレプレナーです。アントレプレナーに一つの形はなく、自分が何を大切にしていて、どんな世界を作り出したいのかが、アントレプレナーの全てです。

 

アントレプレナーとの仕事

私は、マクドナルドの創業者藤田田氏、カルチャーコンビニエンスストアの創業者増田宗昭氏の二人のアントレプレナーと仕事をした経験を持ちます。彼らは、業種業態の異なる事業に従事していますが、アントレプレナーとしての気質には、共通のものがあると感じました。

ビジョンが明確で、独自性があり、決断が早い。そして、何より素敵なことは、夢は実現するということを、私に信じさせてくれたことです。私はそんなアントレプレナーの気質が大好きです。基調講演では、女性アントレプレナーのパネルディスカッションがありましたが、みなさんにも、アントレプレナーの気質を感じることができました。

 

私の独立

私も、独自のアントレプレナーの道を歩む一人の人間です。私が、独立をしたのは、ワークライフバランスを実現するためでした。仕事が大好きだった私は、当時、ワーク・ワークライフを生きていました。そんな私が、子どもの出産を機に、子育てに夢中になり、そこで初めて、ワーク・ライフ・バランスが必要になりました。

仕事はスローダウンしましたが、子育てと、仕事の両立を目指し、実業を離れ、人材育成や組織開発の仕事に取り組む中で、たくさんの学びを得ることができました。

また、子育てを通して、リーダーシップ、タイムマネジメント、チームビルディング、権限委譲のスキルを磨きました。また、子どもの成長に関わることで、人間が本来持っている潜在的能力、成長と学習の可能性を心から信じることができるようになりました。この経験が、今日の仕事の土台になっていると感じます。そして、子どもが成長し、学齢が上がるごとに、仕事の幅を広げ、息子が成人した今日は、再びワーク・ワークバランスの人生を楽しんでいます。

 

女性のリーダーシップ

女性アントレプレナーの皆さんに一つアドバイスをすることを求められたので、私は、リーダーシップの話をしました。

昭和女子大学キャリアカレッジでいつもお話しするのですが、女性はリーダーに最適だということです。リーダーシップとは、影響力のことです。アントレプレナーは、自分の夢を実現するために、他者を巻き込み影響力が必要になります。

リーダーシップの定義は、時代とともに変わり、1980年代は、カリスマ的なリーダーが良いと考えられていましたが、今日では、エンパシーやチームがリーダーシップにおいて重要と考えられるようになりました。多様化する時代の中で、自分と異なる他者の立場や考えを理解することがますます大事になっています。複雑な問題解決にチャレンジすることが求められる時代には、チーム力が欠かせません。グローバルリーダーに最も大切ことは、エンパシーだとも言われる時代です。そして、エンパシーもチームも、女性がとても得意なことです。女性アントレプレナーには、リーダーシップを発揮して、夢を実現して欲しいと思います。

 

世界も日本の女性に注目

残念ながら、ジェンダーギャップレポートによると、日本は、世界149カ国中、114位とう低いランキングです。政治と経済活動に女性が参加していないことが、その理由です。役員会にも国会にも女性がいないため、この国の意思決定は女性抜きで行われています。

もし、女性が意思決定に参加していたら、女性活躍推進ももっとスムーズに行えるし、OECDの平均以下と言われている教育予算も増やすことができるし、意思決定に生活者の視点が生かせるのではないかと思います。一方で、日本は、教育の面で男女平等が実現しています。女性の潜在的な力はまだまだ眠っているままなのではないでしょうか。エコノミストの元編集長ビル・エモット氏が、今年、「日本の未来は女性が決める」という本を出版されたのも、そんな想いがあったからだと思います。

 

自分らしく生きる、働く。それがアントレプレナーの実践。それがやりがいと幸せにもつながっている。自分のアイディアと行動で、社会にポジティブなインパクトを与える女性が増えることが、世界を幸せにする。そう信じて、私も女性アントレプレナーを支援して行きたいと思います。

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