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大学院の同窓会

2019.10.14 文部科学教育通信 掲載

ハーバードビジネススクールの30周年の同窓会に参加するために、9月に、ボストンを訪れました。この時期のボストンは、天候も良く、とても過ごしやすいです。今年は、温暖化の影響か、まだ、秋の紅葉は見ることはできませんでしたが、爽やかな気候の中、芝生の広がるキャンパスで、懐かしい同級生との再会を祝い、楽しい時間を過ごしました。

同級生の様子は様々で、現役で活躍している人もいれば、リタイアモードの人もいます。最近、ますます増えているのは、非営利団体の活用を支援し、社会貢献に従事する人たちです。

私のように、教育に熱い思いを持つ人たちも、たくさんいます。

 

オンライン・スクールリーダープログラム

とても嬉しかったのは、One Harvardの理念のもと、教育大学院とビジネススクールが協働して、オンラインのスクールリーダープログラムのデモを体験できたことです。ケースメソッドのカリキュラムは、とても実践的です。例えば、「荒れた学校に校長として赴任した際に、取り組むアクションの優先順位は何か」といった問いを中心に、学校改革について考えます。実際に、変革を成功させた校長先生へのインタビューも視聴することができるので、自己のリーダーシップを振り返り、アクションプランを考えることができます。

グローバルアドバイザリーボードとして、HBSの未来について考える会議に参加しているのですが、私も、教育大学院とのコラボで、公教育の質の向上にHBSが貢献するとよいと提案をした一人なので、プログラムを体験できて本当に嬉しく思いました。

HBSの進化

同窓会の最大の魅力は、最新の学びに触れる機会になることです。同窓会は、5年ごとに行われていますが、最近は、グローバルアドバイザリーボードとして、隔年、母校を訪れているので、最新の学びに触れる機会は増えています。それでも、1年ごとに、進化を遂げる学校の様子を知ることは、大きな刺激になります。

学長が素敵すぎる

ノリア・ニッティン学長はインド人。学長になられて10年になります。その間、母校は、大きな変容を遂げました。時代に合わせて、歴史のある大学院が、進化し続けることは、日本にいると考えられません。ニッティン学長のリーダーシップとイノベーションの推進は、まるで教科書通りです。そのひとつが、オンライン・ケースメソッド・クラスルームの実現です。今回初めて、オンライン授業が行われるスタジオを訪れ、想像を超える学習体験の質の高さに圧倒されました。

5年前のアドバイザリーボードでは、クラスの臨場感をオンラインで再現できないのではないかという懸念点が多く出ていたので、実際に出来上がった素晴らしいオンライン授業を体験し、自分の想像力のなさを反省しました。

ハーバードビジネススクールの特徴は、ケーススタディにあります。1年目は、九十人のグラスメートが、ケースをもとに議論を繰り返すことで、学生は、多面的、多角的な判断軸を手に入れ、同時に、ビジネスを成功に導くための法則を学びます。場を共有することが大切だから、教室のオンライン化は難しいと誰もが思っていました。

テクノロジーをどう生かすのか

日本でも、テクノロジーを教育に生かすEdtechが花盛りです。テクノロジーを教育に生かすという発想自体は、全く、目新しいものではありません。しかし、ハーバードビジネススクールのオンライン教室は、少し様子が異なり、ケーススタディという学習メソッドと教室環境をすべてオンラインに置き換えることに挑戦しました。オンラインになっても、リアルな教室で学ぶ体験と学習効果を一ミリも損なうことなく授業を再現することは、大きな挑戦でした。

クラスのスタートは、いつも、コールドコールで始まります。誰が、指名されるかわからないため、常に、クラスのスタートは緊張感から始まります。この緊張感がなければ、ケーススタディではないと、体験した誰もが思うほど、コールドコールは、ケーススタディに欠かせません。それをオンラインでも再現したのです!

オンラインでは、ランプを使って、最初の発表者が指名されます。指名された学生は、決めれた時間内にコメントをすることが求められます。実際のクラスでは、時間管理はそこまで厳しくないのですが、オンライになり、時間管理が加わりました。教室では、どんな発言も、時間とともに消えるのですが、オンラインでは、発言はデータとして残ります。結果的には、オンラインの方が、教室よりも、厳しい環境になりました。

テクノロジーと人間が臨場感を作り出す

壁中に映し出されている60名の参加者は、一人ひとりがテレビスクリーンのようなサイズで、とてもはっきりと顔が見える状態です。オンラインなので、世界中の人たちが、授業に参加することが可能です。

次に、驚いたのはカメラの数です。60人の参加者の顔が投影されているスクリーンの下には、60台のカメラが設置されています。教授が、誰かを指名したり、誰かと対話する際には、そのカメラを通して語りかける様子が投影されるため、本当に教授が自分に語りかけていることを実感することができます。あまりの臨場感に、スクリーンを介しての教室なのに、教授が近づいてきて、慌てて、後ろに退く人もいるそうです。

そのほかにも、何台ものカメラが、教授の様子を多方面から撮影し、教授の動きをリアルに感じられるように工夫しています。これらは、現在、人間の力に依存していますが、いずれ機会に代替される日が来るでしょう。

さらに、音声にも、細部へのこだわりが見られます。通常、オンライン会議を行う際には、話をする人以外が、音声を切っておくのが一般的です。 ところが、オンライン教室で音声を切ってしまうと、教授がジョークを言っても、誰も笑わない不自然な雰囲気になります。そこで、少し小さめの音で音声が常に聞こえる環境にしているそうです。 そして、誰かが話す時だけ、その人のマイクの音量を高めるのだそうです。市販の会議システムとは、大違いです。

今回、実際に、オンライン教室を見学し、テクノロジーを活用するためには、2つのことが大事であることを学びました。一つは、自分は何者かということをちゃんとしていることです。この事例では、教室で実施されるケーススタディという学びの体験です。それは、受講生と先生のやりとり、受講生同士のやりとりによって作り上げられています。どのクラスも、議論が中心であるため、同じになることはありませんが、そこには確立されたメソッドがあり、成功の法則があります。この法則を知り尽くしているからこそ、オンラインでも、教室同様の学びを提供することができる環境を作り上げることができました。

二つ目は、妥協を許さない、エクセレンスの追求です。彼らに、もし、オンラインだから仕方がないという思いがあれば、これくらいで良しにしようということになるでしょう。しかし、彼らは、オンライン教室での学習体験が、リアルな教室と同じになることを求めました。それが、開発チームにも伝わり、ここまでのプログラムに発展したのだと思います。

ハーバードビジネススクールの進化から、目が離せません。

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