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組織デザイン

2019年8月26日 文部科学教育通信掲載

自律型人材を増やし、自律型組織をつくる活動を加速しています。実はグローバル化する以前の日本企業は、自律型組織でした。しかし、いつのまにか、指示命令・管理型組織に変容してしまいました。その結果、組織は停滞し、人も充実感が得られない そんな状態に陥っていることがとても残念だからです。

牧歌的な日本企業

私が、新入社員だった頃は、まだ、日本型経営の名残あり、人々は愛社精神を持ち、会社には、家族的な雰囲気がありました。日本は、世界的に見ても、経営者と新入社員の給与の差がとても小さく、みんなが同じフロアーで仕事をする、フラットな組織でした。当時は、まだ、終身雇用が当たり前で、会社を売り買いすることも、人が流動することも稀でした。

これが、今から30年前の日本企業の様子です。

指示命令・管理型組織

上下関係がより鮮明になったのは、バブル以降ではないかと思います。特に、業績を上げるために、指示命令・管理を徹底する企業が増え、ポジションパワーで圧をかける組織風土も生まれました。そうなると、終身雇用で流動性がないことが、人を苦しめ、倫理的に間違った指示にも、従わなければならない。上司の評価も、かわいい部下か否か、俺のいうことを聞くか否か、といったとても俗人的な評価でしたから、誰もが、上司の顔色を見ることになります。

バブルの頃から、日本企業にも西洋の制度や仕組みが紹介され、成果主義という考え方が導入されます。それまで、家族的な雰囲気で、年功序列の給与制度だった日本企業にも、成果を挙げている人を高く評価するという考え方が導入されました。成果主義の導入により、指示命令・管理で人を動かす組織風土がより強くなって行きました。

学校

この10年間、学校の教育改革を支援するために、様々な活動に取り組んで来ました。その中で、大きな課題が浮き彫りになりました。それは、指示命令に従う受身な人材を育成する学校文化を変えない限り、日本の教育はよくならないということです。

先生と生徒の上下関係、関心意欲態度の評価のために行動する生徒たち、その様子が、バブル崩壊後の日本企業の姿と重なりました。そこで私は、学校文化を変えるために、企業を自律型組織に変える活動を始めています。

企業と学校の関係

遠回りのようですが、企業が変われば学校も変わると考えました。企業が変わる方が、学校が変わるよりも簡単です。その理由は、2つあります。企業の方が、課題を可視化しやすく、また、組織を変えることによるメリットも評価しやすいからです。業績や、組織風土、人々のやりがいなどとして、変化を誰もが実感することができます。

企業が変われば学校が変わる そう信じて活動にまい進しています。企業が変われば、社会通念が変わり、社会通念が変わると、学校にもその影響が出るからです。また、企業に働く親たちの常識が変われば、学校にもその影響がでます。社会をシステム思考で捉えると、学校は、社会の映し鏡と考えることができるため、企業が変われば学校が変わるはずです。そう信じて、企業の組織改革を支援しています。

OS21

今、日本でも、子どもたちの主体的、対話的で深い学びに重きを置く教育が始まっています。自律型組織を実現するためにも、主体的、対話的で深い学びが必要になるため、大人向けに、リフレクションを広める活動に取り組んでいます。この学び方を、コンピューターのOSと、21世紀を掛け合わせて、OS21と呼んでいます。自分の考えや気持ちをリフレクションし、批判的なスタンスで、振り返ることで、深い学びを得ることが可能になります。OS21を企業で広めることで、親が家庭でも、主体的、対話的深い学びを子どもたちに実践してくれることを期待しています。

文化・風土

教育改革では、常に、何を教えるのかに意識が向いてしまいますが、学びを支える文化・風土の醸成が、何を教えるかと同じ位大事だと考えています。

学びのためには、心理的安全性が担保されていることが必須です。誰もが、安心して巣の自分を出せて、巣の自分を出しても、受け入れてもらえるという安心感です。教育現場に、この心理的安全性がないことはとても大きな課題です。

学校は、先生にとっても、生徒にとっても、安全な場所ではないのではないか、そう考えています。先生と生徒の人間関係、保護者と先生の人間関係、生徒同士の人間関係、どれをとっても、不安な状態ではないかと思います。この環境では、安心して、本音を出すことはできず、誰もが、表層的な関係性の中で、調和を保っているのではないでしょうか。この環境では、主体的、対話的で深い学びを実現することは難しいです。

ピースフルスクール

学校の文化を変えるために、何もしていない訳ではありません。オランダのシチズンシップ教育ピースフルスクールを広める活動が、それにあたります。子どもたちが、自立と共生のために必要な理念とスキルを磨くことで、子どもたちが、自ら心理的な安全性を実現する教育です。

多様な意見があること、多様な気持ちがあることが、当たり前であると考え、対立が起きたら話し合うという行動基準を持つことで、先生が介入しなくても、子どもたちが、自ら社会を作り上げることができます。その結果、子どもたちの主体性も高まり、学校も自律型組織に変わることができます。

学校が自律型組織に変わるためには、先生が指示命令を手放すだけでは充分ではなく、生徒が主体的に問題を解決する力を高めることが必要です。その方法論を提示してくれるのがピースフルスクールなので、日本の教育が、指示命令に従う受け身人材ではなく、自律的な人材を育てる上で、このプログラムが必須ではないかと思い、活動しています。

時代が求める組織

企業経営の世界では、上司のいない、階層のないフラットな組織という概念が生まれています。個人が、組織の存在目的とつながり、自律的に使命を果たす組織です。自律的な個人は、指示命令がなくても、自ら考え動くことができるし、お互いに協力して問題を解決することもできる このような信念を持つ新しいタイプの組織が、世界中で生まれています。

高度成長期の日本企業は、これに近かったのではないかと思います。以前、ある自動車メーカーで管理職研修を行った際に、「日本でも立ち上げたことがない工場を、突然、アメリカで立ち上げてこいといわれ、がむしゃらに頑張った」とか、「いきないり、30代で150人の部下を持ち組織を動かした」というような話がでました。成長のスピードにあわせて、誰もが精一杯チャレンジする世界では、指示命令を待っている社員はいなかったのではないかと思います。

命令に従う受身人材が増えてしまったのは、この数十年の話ではないかと思います。そうであれば、私の仕事は、私たちのDNAにある、自律性を蘇らせるだけでよいはず!そう信じ、自律型人材と自律型組織を増やす活動に取り組んでいます。

そして、学校現場にも、子どもたちの自律性を守り、育む環境が当たり前になる日が来ることを願い、経済と教育の対話を続けていきたいと思います。

 

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