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わくわくする働き方改革とは

2019.06.10 文部科学教育通信掲載

働き方改革関連法が施行され、4月1日より、働き方改革が本格化しています。本年度は、大企業を中心とした取り組みですが、来年度には、中小企業を含めたすべての企業で、働き方改革が義務化されます。

 

政府のホームページには、その目的が以下の様に示されています。「働き方改革の目指すもの」として以下の記述があります。

「働き方改革」は、働く方々が、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で「選択」できるようにするための改革です。日本が直面する「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」、「働く方々のニーズの多様化」などの課題に対応するためには、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境をつくることが必要です。

 

働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現することで、成長と分配の好循環を構築し、働く人一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指します。

 

共働き社会への移行

働き方改革関連法の改正の背景には、過去30年の女性活躍推進の歩みがあります。男女雇用機会均等法により本格化するはずであった日本の女性活躍は、まったく進まず、その理由が、結婚と出産にありました。私の同期も、すべて退職し家庭に入る道を選んでいます。そこで、政府が選んだ方針が、働き方改革です。労働人口が減少する中、女性の社会進出と、出産をともに加速させるためには、働き方そのものを見直す必要があるという結論にいたります。戦後の高度成長を支えた企業戦士という働き方、良妻賢母という女性像を、共働き夫婦モデルに変えていくという政府の決意が、働き方改革関連法という形で実を結びました。その成果は著しく、今日、子どもを出産しても会社を辞めることを考える女性は減り、出産後、時短で働く女性も増えています。

 

最近では、赤ちゃんを抱いているお父さんの姿や、保育園の送り迎えにいくおとうさんの様子を見ても、お母さんは病気かしらと心配することもなく、当たり前の光景となりました。それでも、平日、お父さんがこどもと公園で遊んでいると、まだ、少し違和感があるかもしれません。この違和感も、男性の育休が当たり前になれば、日常の光景になるのでしょう。若い世代では、夫婦で家事も子育ても一緒にやることが、すでに当たり前になっている様子です。テレビでは、男性向けの料理番組も人気のようで、男性も厨房に入ることに違和感を持ちませんし、妻が働いていることを恥ずかしく思うこともありません。

 

世代間ギャップ

労働人口の減少に伴い、加速する女性活躍ですが、社会全体がすぐに変わる分けではありません。特に、会社では、管理職世代の認識が男女雇用機会均等法時代とそれほど変わっておらず、多くの女性たちは、ミックスメッセージを受け取りながら、日々活躍しているのが現実です。

 

女性活躍というテーマで、様々な企業の方々と意見交換を行いますが、その中で実感するのは、世代間ギャップの大きさです。若者にとって、高齢化社会は、家計問題であり、生活を維持するために共働きは避けられないと考えています。若い女性たちは、どうせ長くはたらくなら、給与も上がった方がよいので、管理職になることも当然と考え始めています。少し年上のミレニアム世代(今年38歳)までは、この感覚を理解することができますが、それ以上の年齢になると、年齢が上がれば上がるほど、過去の経験に基づくものの見方が強くなり、女性活躍を本気で推し進めるという意識は薄くなります。

世界では、Z世代(1990年代後半から2000年代にかけてに生まれた世代)に注目があたっていますが、縦型で高齢化社会の日本では、Z世代はマイノリティであり、年上の大人がZ世代から学ぶという視点が生まれないのも、世代間ギャップが残ってしまう背景です。

 

長時間労働の是正ではない

働き方改革は、このように女性の社会進出を助けるために始まった取り組みなので、長時間労働の是正に意識が向いてしまう傾向がありますが、働き方改革にはより大きな目的があります。それは、働き方そのものを見直すことを目的としています。罰則規定も加わり、厳しく管理される労働時間に人々の意識は向きますが、労働時間の削減は、結果であり、その目的は生産性の向上にあります。そこに踏み込める企業のみが、働き方改革の恩恵を受けることになります。多様な人材が生き生きと活躍し、生産性を高めることができ、顧客価値も企業価値も高まることで初めて、働き方改革は成功したといえます。日本企業の多くが、その第1歩を踏み出しました。始まったばかりの改革では、目に見えた成果は期待できませんが、これから進む改革が楽しみです。

 

多様な働き方の選択

多様な働き方が選択できる時代になり、時差出勤フレックスタイム制度がさらに進化し、時間と場所に縛られない働き方が当たり前になりそうです。生産性が上がるのであれば、カフェで仕事をしてもよいし、会議にはネットを通して遠隔から参加してもよいという職場も増えています。スラック等ネット上のコミュニケーションツールが生まれ、新たなコミュニケーションスキルを身に付けた若者たちのコミュニケーションスタイルは、ネット移民(生まれたときにはネットがなかった世代)とは異なります。顔を合わせて話すことが重要だと叫ぶのは、ミレニアムよりも上の世代でしょうか。

 

管理しなければ人は怠けるという考え方ではなく、自分のモチベーションを自己管理し、仕事の成果にもコミットする自律型人材を目指す若者も増えています。性善説のようにも見えますが、一方、役割期待の明確化や評価やフィードバックの徹底など、厳しさも必要になります。これまでのように、長く働くからやる気があるとか、真剣だという情緒的な評価は通用しなくなるのでしょう。

 

兼業・副業、流動性

サラリーマンが、兼業・副業を行うことや、転職や復職など流動化も当たり前の時代になりそうです。戦後の行動経済成長をささせた新卒一括採用と終身雇用の概念は、工場の熟練工を育てることがその目的でした。高度成長が終わり、転職は進み、今では2人に一人が転職する社会になっていますが、それでも、新卒一括採用の仕組みが継続しています。企業側も大学側も、学生も親も、この制度が当たり前であると信じており、その変更のめどは立っていません。しかし、世界に目を向けると、新卒一括採用を行っているのは韓国と日本の2国のみなです。理論上は、新卒一括採用以外の採用のあり方でも、個人は不幸にならないし、企業も困らないはずです。こういった議論も、これから始まっていくのでしょう。

 

AIと人生100年時代

さらに、働き方改革が進む背景として、AIをはじめとするテクノロジー革新があります。近い将来、人間の仕事の半分は機械に代替されるといわれる中、人間に求められる役割が変わり、雇用のあり方も変化することが予測されています。そんな時代には、学び直しで、柔軟に自分のキャリアをアップデートさせていくことが必要になるようです。人生が100年になることを考えると、そのアップデートは、人生に1度ということはなさそうです。人生を冒険のように捉え、変化を楽しむ心持ちが大事です。

 

世界では、起業家教育が盛んです。デンマークでは、小学生の頃から起業家教育を始めると聞きました。今日の大学では起業家教育は普通のことのようです。その背景には、やはり、テクノロジー革新があります。誰もが、小さい投資ですぐにビジネスを立ち上げることができる時代になり、企業による雇用の創出と同じくらい、個人による自主的な雇用の創出が期待されるようになりました。

 

働き方改革の未来を創造すると、不安もありますが、冒険を楽しむ心で時代の波を楽しくサーフィンしていきたいと思います。

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