skip to Main Content

リーダーのリフレクションが未来を創る

2018.08.06文部科学教育通信掲載

OECDが2003年に打ち出した教育指針キーコンピテンシーは、世界の教育改革に大きなインパクトを与えています。変化・複雑・相互依存の時代に生きる子どもたちが幸せに生きるために、複雑な問題を解決する力や、テクノロジーを活用する力、グローバル化する社会の中で共生を実現する力などが、学校教育の領域に加わりました。その核心として、リフレクションの重要性が掲げられていることを、我が国の教育にも活かして欲しいと願っています。

 

リフレクションの効用は、様々ありますが、本日は、私が目撃したリーダーのリフレクションを中心に紹介してみたいと思います。

 

ハーバードビジネススクールのリフレクション

私は、丁度日本がバブルの絶頂期に、ハーバードビジネススクールに留学しました。クラスメートの大多数はアメリカ人ですが、世界中からの留学生もいました。その中には、私を含めて16名の日本人留学生がいました。ケーススタディを中心に行われる授業は、クラスメートの意見を中心に構成され、教授は、時々、良質な質問を投げかけ、我々の思考をガイドします。そんな日々のディスカッションの中でも、我々日本人がどのように考えるのかは注目の的でした。2年間の留学期間に、マーケティング、財務、事業戦略など様々な学びの機会を得ることができましたが、私にとって一番の学びは、彼らのリフレクションに向かう姿勢です。その当時のハーバードビジネススクールにとって、「なぜ、アメリカが日本に負けたのか」はとても重要な問いでした。我々日本人留学生の思考パターンや行動様式、その前提となる判断基準などは、彼らの研究対象でした。私自身も、留学経験を通して、日本型経営とは何かを学ぶことができました。その後、アメリカでは、メイド・イン・アメリカに力を入れる等、新たな経営のあり方が次々と生まれ、再びその強さを取り戻すことになります。

 

リフレクションしない日本の経済界

日本型経営の強さを理解し、自信満々で帰国した私にとって衝撃だったことは、バブルの末期あたりから、日本が次々と、その強さの源を放棄していったことです。中でも、終身雇用と株の持合いを止めたことは、企業経営の根幹に関わるシフトでした。その結果、日本型経営はその強みを失っていきました。しかし、その後も、日本で、ハーバードビジネススクールが行っていたようなリフレクションには、一度も遭遇したことがありません。よい未来を創るためには、前に進むだけではなく、過去を振り返り、己を知ることが重要であるという留学経験を通しての学びは、今では私の大切な信念となっています。

 

 

ジェフリー・サックス 米国の経済学者ジェフリー・サックスが、SDGsやその前身であるミレニアム目標に力を注ぐ背景に、リフレクションがあることを知りました。彼が、経済学を学ぶためにハーバード大学に入学した1972年に、成長の限界の本が出版されました。成長の限界は、人類初の持続可能性に対する問題提議の本でした。そこで、ジェフリーは、教授に、「このような本が出ているが、問題はないのか」とたずねたところ、教授は、「市場の原理が問題を解決するから、なにも心配する必要はない」と言ったそうです。しかし、市場の原理は、問題を解決しなかったというリフレクションから、ミレニアム目標に取り組みました。ミレニアム目標は、部分的には成果を出したものの、地球規模での取り組みに発展しなかったことから、リフレクションを経て、SDGsにおいては、企画の段階から、NGOやNPOなどアクションを牽引する人々を巻き込む、先進国の目標も設定し、地球規模の取り組みになるような企画を盛り込みました。

 

クレイトン・クリステンセン ハーバードビジネススクールの同窓会で、クリステンセン先生の話を聞きました。「僕が、ビジネススクールに入学した頃には、スプレッドシートはなく電卓だけだった。その後、スプレッドシートが生まれ、企業経営に活用されるようになった。コーポレットファイナンスは、経営のためのツールだったが、いつのまにか、ウォールストリートのオフィスで毎日眺められるものになり、やがて、ウォールストリートのために数値を作ることが、経営の目的になっていった」 クリステンセン先生は、このシステムが暴走し、経営を支配していることが問題だと話していました。

 

ビル・ドレイトン

  • インドで、ある女性の社会問題の解決を支援したことが始まりで、今日では3500人のアショカフェローをネットワークするアショカの創立者ビル・ドレイトンが、社会起業家とインタビューをする中で、ある共通項を見出します。それは、どの起業家も、10代で何か身近な問題の解決に挑戦した経験を持つということでした。そこで、アショカでは、ユースベンチャーというプロジェクトで、22歳までの若者のアクションを支援しています。多くの若者が、10代で何か身近な問題に取り組むことで、起業家が増えるという仮説のもと、取り組みを進めています。
  • アショカでは、社会起業家の取り組みに、システミック・チェンジと命名し、社会変革の新たなアプローチを奨励しています。魚の食べれない人に、魚釣りを教えるのではなく、漁業システムを変えるという発想です。システミック・チェンジの発想は、社会起業家のアプローチに対するリフレクションから生まれています。ウェンディ・コップ
  • ティーチ・フォー・アメリカは、優秀な大学生を2年間、困難な地域の学校に派遣をし、貧困による教育格差の問題解決に挑戦する非営利団体です。今日では、文系大学生の就職ランキングでトップになり注目を浴びています。
  • 創業者のウエンディ・コップは、優秀な大学生を採用しているにもかかわらず、その成果にはばらつきがあることに気づきました。生徒の学力を飛躍的に伸ばし、大学への道筋を創る支援のできる先生もいれば、チャレンジの大きさに圧倒される先生もいました。そこで、ウェンディは、成果を挙げている教師を観察し、彼らに共通の特性を見つけました。その特性は、Teaching As Leadershipと呼ばれるルーブリックに発展し、今日でも、教師教育に活用されています。  
Back To Top