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非認知能力学習

文部科学教育通信 2018.03.12掲載

子どもたちの非認知能力学習のための教育研究と実践を行なうCASELの開発した否認知能力に関するコンピテンシーがとてもすばらしいです。

 

CASELについて

CASELは、シカゴに拠点を置く非営利団体で、学校における質の高い社会情緒的発達のための教育を支援するために研究を行っています。20年以上前にこの分野を定義し活動を開始し、現在では、教育者、研究者、政策立案者、地域社会のリーダー、家族、学生と密接に協力して、教育の普及活動を行っています。

 

コアSELコンピテンシー

CASELが開発したコアSELコンピテンシーは、非認知能力を5つに分類しています。非認知能力学習(SEL)は、スキル、態度、行動を統合して効果的かつ倫理的に日々の課題に対処する能力を高めます。多くの同様の枠組みのように、統合された枠組みは、自己認識、対人関係、および認知能力の発達を助けます。多くの教育者や研究者が、コンピテンシーを評価する方法についても、研究に取り組んでいます。

 

自己認識

自分自身の感情、思考、価値観、そしてそれらが行動にどのように影響するかを正確に認識する能力。信頼感、楽観主義、「成長の考え方」を基盤として、自分の強みと限界を正確に評価する能力。

  • 感情の特定
  • 正確な自己認識
  • 強みの特定
  • 自信
  • 自己効力

自己管理

効果的にストレスを管理し、感情をコントロールし、自分の動機づけ行う。状況に合わせて、自分の感情、考え、行動を管理する能力。個人的、学問的目標を設定し、それを達成する能力。

  • 感情のコントロール
  • ストレスマネジメント
  • 自己規律
  • セルフモチベーション
  • 目標の設定
  • 組織力

社会意識

多様な背景や文化を持つ人々を含む、他人と視点を共有し、共感する能力。行動の社会的および倫理的規範を理解し、家族、学校、コミュニティのリソースとサポートを認識する能力。

  • 大局観
  • 共感
  • 多様性の尊重
  • 他人の尊重

対人関係スキル

多様な個人やグループとの健全で有益な関係を確立し維持する能力。明確にコミュニケーションを取ったり、よく聞いたり、他の人と協力したり、不適切な社会的圧力に抵抗したり、建設的に紛争を交渉したり、必要に応じて助けを求めたり提供する能力。

  • コミュニケーション
  • 社会参画
  • 関係構築
  • チームワーク

責任ある意思決定

倫理基準、安全上の懸念、社会規範に基づいて個人の行動や社会的相互作用について建設的な選択をする能力。さまざまな行動の結果の現実的な評価、自分自身や他者の福利を考慮する能力。

  • 問題の特定
  • 状況の分析
  • 問題を解決する
  • 評価する
  • 反射
  • 倫理的責任

SELコンピテンシーは非認知能力を高める上で、とても有効なフレームワークです。複雑な社会に生きる子どもたちが、自分や周囲、社会に善い貢献をすることができる人に成長するために必要な教育を行なう上で、大切な指針になります。

 

ピースフルスクールと非認知能力

現在、幣財団では、オランダのシチズンシップ教育を普及する活動を行っています。自立と共生を教育の狙いとし、幼児から始めるシチズンシップ教育です。この教育では、幼児期から感情リテラシーを育みます。自分の気持ちを認知し、言語化し、コントロールすることを、幼児に求めます。最初は、なぜ感情リテラシーをそこまで高めなければならないのかが正直よく理解できなかったのですが、今では、その理由が明確に理解できるようになりました。私たち大人もそうですが、頭ではわかっているのに、行動が伴わない時は、感情が自分を支配してしまい、自分自身で自分をコントロールできていない状態になります。冷静になればできることが、感情的になるとできないという経験は、皆さんにもあると思います。どんな時でも、理性的な判断ができる力を身に付けるために、自分の感情をコントロールする力を幼児期から磨くシチズンシップ教育を通して、私自身も成長を遂げています。

Core SEL Competencies

思考と感情の関係

感情が、私たちの判断において重要な役割を担うことが、今日では、脳科学の世界でも証明されています。私たちは、生活をする上で様々な決定を下しますが、その際に指針となるのが過去の経験です。私たちは、自分のとった行動の結果を、その時に味わった感情から「知恵」と「愚行」に区分して知識として脳の中に蓄え、次に決定を下す際の指針にしています。また、行動の結果を予測した時に起きる感情も決定を下す際の指針となります。感情に関わる脳の前頭前皮質に損傷を受けた人が合理的に判断できなくなるのは、思考を支配する感情という指針を失うことによります。人は、感情の機能を失うと、過去の経験から学ぶことができないだけではなく、新しい経験から学んでいくこともできなくなり、間違った意思決定を行なってしまいます。論理的思考から感情が切り離されてしまうと、思考したり、決定したり、学習したりする能力が欠落してしまいます。感情は、我々の判断の質にも大きく関わっています。

 

感情停止の課題

日本では、我慢をすることが奨励されます。我慢は美徳ではありますが、注意しなければならないことは、感情の発達を妨げている可能性です。自分の心を認知して、その上で、やるべきことだと自分の中で納得して状況を受け入れるのであればよいのですが、オートパイロットでいやなことを受け入れていると、感情停止状態に陥ってしまいます。この状態を継続していると、やがて、自分の気持ちが解らない状態になります。これは、深刻な学校教育の課題です。小学校から、自分の気持ちや意思を横に置き、学校の仕組みにあわせて生きる訓練をしていると、自分の意思を持たないほうが楽です。しかし、やがて社会人になる頃になると、「あなたは何をしたいの?」と突然、自分の意思をもっていないことを批判されてしまいます。単線から複線に生き方が変わる時代には、学力のみに焦点を当てるのではなく、非認知能力を高める教育にシフトしていく必要があります。

ディズニー映画 インサイドヘッドのストーリーにもありますが、人間は、悲しみの感情を封印すると、喜びの感情も同じように感じられなくなるそうです。企業で心の病になる人たちの多くは、悲しみや苦悩の感情を封印し、その結果、喜びの感情も持てなくなってしまっているのでしょう。我々の日々の生活は、我慢しなくてはいけないことばかりです。しかし、その際にも、自分の心の声が聞けて、心を認知した上で、コントロールするという心の扱い方を知っていることがポイントです。ピースフルスクールのプログラムを通して、私自身も、この心の習慣を身に付けることができるようになりました。そこで、21世紀学び研究所を立ち上げ、この心の習慣を大人でも簡単に習得できるプログラムを開発し、メタ認知力を高める活動を始めています。

 

 

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