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ホラクラシーⓇ研修

文部教育科学通信 2017.12.11掲載

非管理型組織の創り方を学ぶホラクラシー研修に参加しました。2日間の研修の講師は、ホラクラシーという組織運営法を開発したアメリカ人のトム・トミソンさんと、ヨーロッパでホラクラシーを広めているオーストリア人のクリスティアーネ・ソイス・シェッラーさんです。この研修を通して、改めて時代の変化が着実に起きていることを実感しました。

 

ホラクラシーが生まれた背景

変化する時代の中で、100年以上前と変わらないヒエラルキー組織に限界が来ているというのが、開発者であるトムの課題認識です。起業家でもあるトムは、過去に6社の起業をしており、その経験を通して、従来型の組織の限界を感じたそうです。同時に、21世紀に入り、経営環境が大きく変化する中で、ヒエラルキー組織で働く人々は、自分の仕事に高いモチベーションを保つことが困難であると感じていたり、メンタルの問題を抱えていると言います。ヒエラルキー組織で人々が感じる窮屈さや不自由さから人々を解放し、組織としてもよい成果を出すことができる新しい組織のあり方を追求した結果生まれたのが、非管理型組織ホラクラシーです。これまでも、ティールをはじめとする様々な非管理型組織の形式が生まれています。トムは、これらの先行事例から学び、それをフレームワークに落とし込み、誰もが学び、実践することを可能にしました。

 

テクノロジー革新による民主化の流れ

インターネットの時代になり、世界の民主化は進みました。インターネットにアクセスすることができれば、年齢や階層、性別に関わらず、すべての情報にアクセスすることができ、同時に、誰もが媒体広告の枠を購入しなくても世界に発信することが可能になりました。

 

メインフレームの時代からパソコンの時代に変わり、情報格差が権威を支える時代が終わったと言われました。しかし、企業における情報共有は、当初想定していたほど進まなかったというのが実情ではないかと思います。ヒエラルキー構造で権威を持つ人々にとって、情報共有を行うメリットは限定的で、テクノロジー革新を100%経営に生かす経営者は、現れませんでした。経営者の多くが、デジタルネイティブ(生まれた時からネット環境がある世代)ではないことも理由かもしれません。

 

ホラクラシー経営は、テクノロジー革新の恩恵を100%活かし、情報の透明性を目指します。その意味で、ホラクラシー経営は、企業経営の「民主化」とも言えます。

 

学習する組織

ホラクラシー組織の根底には、学習する組織論があります。学習する組織とは、1990年にマサチューセッツ工科大学のピーター・センゲ氏による著書”The Fifth Discipline”(邦題「最強組織の法則」)で紹介され、世界中の経営に大きな影響を与えた組織論です。長年、私の信条とも言える学習する組織は、起こりうる最良の未来を実現するために人々が気づきと能力を高め続ける組織です。人々が高い目的意識と学習能力を持つことで、学習する組織が実現します。ホラクラシー組織においても、学習する組織の手法が生かされています。

 

パーソナルマスタリー

「私はなぜここにいるのか」「私は何を実現したいのか」それが仕事であっても、オートパイロットで仕事に没入するのではなく、自分自身のあり方を問い、心の声に耳を傾け、自分なりに明確な目的意識を持ち、物事に向かうという主体性を求めます。これを、学習する組織では、パーソナルマスタリーと呼びます。学習する組織の始まりは、パーソナルマスタリーを持つ個人であり、受身で動く人々の集団が学習する組織を実現することはできません。このため、従来のヒエラルキー組織が、学習する組織になるためには様々な工夫が必要になります。米国のGEは、30万人近い従業員を持つヒエラルキー組織で学習する組織を実現していますので、それは、決して不可能なことではありません。

 

共有ビジョン

学習する組織では、どの単位でも人が集団で物事を進める上で、ビジョンが共有されています。ビジョンは、厳密には3つの要素に、分かれます。①我々の使命は何か、②我々は、何を実現したいのか(ゴール)、③我々が大事にしている価値観は何か この3つのことについて誰もが合意をした形で物事が動きます。そのためには、集団のものであるビジョンが、個人のものになる必要があります。学習する組織では、集団のビジョンが、自分にとってなぜ大切なのか、そのために自分は何に取り組むのかを、誰もが私を主語に語ることができます。

 

クリエイティブテンション

学習する組織は、クリエイティブテンションで動きます。クリエイティブテンションとは、現状と有りたい姿にギャップが存在する時に生まれる緊張感のことです。理想の状態でない現状に対して、イラッとしたり、不満やストレスを感じることがあります。これは、理想の姿に向かいたいという欲求がもたらす緊張感の表れです。その際に、しかたがないと考え、その緊張感を開放するという処理の仕方もありますが、学習する組織では、どうすれば理想を創れるかを人々が考え始めます。我々が自ら課題を発見し、課題解決に向かう行為の前提には、必ずこのクリエイティブテンションがあります。

 

ホラクラシーとは

ホラクラシーは、非管理型組織を実現したい人々が、管理型組織からどのように移行すれば良いのかをガイドする手法です。最近では、起業の段階から、非管理型組織を目指す人々も現れていて、その場合には、出資者やオーナーという概念まで取り除き、既存の会社組織に存在する全ての潜在的なヒエラルキー概念を取除く法人運営を実現しています。

 

トムに、既存の企業の中でどのような企業が非管理型組織を選択するのかと尋ねたところ、従来型のヒエラルキー組織では、企業の成長に限界があり、同時に、個人も強いストレスにさらされている組織だそうです。非管理型組織に移行することにより、企業は高い生産性と持続可能な成長を手に入れ、個人は、自由と安心を手に入れるというのです。

 

ボスはパーパス(目的)

従来の管理型組織では、ボスは上司である管理者ということになりますが、非管理型組織には、上司が存在しません。全ての人々が自分の役割に対して、権限を持ち、主体的に考え行動することができます。その際に、指針となるのが、組織のパーパスであり、組織における自分の役割のパーパスです。何のために存在するのか、何を実現するのか、成功の評価軸は何かは、全てパーパスを指針に判断することになります。

 

役割と権威

非管理型組織では、一人ひとりが、役割と権限を持ち、自分の役割においての意思決定は全て行います。それでは、間違ってしまうことがあるのではという不安を感じる方もいるもしれませんが、心配には及びません。課題があると、誰かが気づき声をあげます。一人ひとりが、パーパス(目的)に意識を向けて入れば、理想の姿とは違う現状を発見すると、クリエイティブテンションが生まれ、課題を解決する方向に組織は向います。ホラクラシーは個人の主体性が開花する21世紀型組織の一つの強力なモデルではないかと思います。

非管理型組織の創り方を学ぶ ホラクラシーR研修資料より引用

 

 

 

 

 

 

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