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輪の広がり

2017.5.15 文部科学教育通信掲載

今回は、2つのうれしい出来事をご紹介します。

2011年から取り組んでいるピースフルスクールが4月18日の朝日新聞 オピニオン&フォーラムに紹介されました。ピースフルスクールは、クマヒラセキュリティ財団で取り組む幼稚園、小学校を対象としたグローバルシチズン教育です。新聞を読み共感したというメールもたくさん頂きました。もう一つは、4月22日に開催されたバディウォークinヨコハマに参加したことです。2つの出来事を通して共感の輪が広がる実感を持つ事が出来ました。この輪が日本中に広まることを夢見て、活動を加速させていきたいと思います。

相手の話、聞こうよ

記事のテーマは、「相手の話、聞こうよ」です。前衆議院議員の佐々木憲昭さん、落語家の三遊亭白鳥さんと私の3名が、政治、落語、教育と3つの異なる世界から、対話の大切さを語りました。

総理との対話

佐々木憲昭さんは、1996年から18年間にわたり、橋本龍太郎氏から安倍晋三氏まで10人の総理に質問をした経験をお持ちです。その中で、多くの首相とは意見が違っても議論を重ねるうちにかみ合ってくる感じがあったそうです。激しい議論を通して、気心が知れて、お互いに尊敬の念が芽生えたそうです。国会でも、リーダーたちが対立を乗り越える対話をしていたことを知り、とてもうれしい気持ちになりました。しかし、残念ながら、現在の総理は質問に対しても自分の主張を繰り返すことが多く、人の話を聞かない姿勢がより強まっています。政治の世界にも、対話を取り戻して欲しいと思いました。

お客様との対話

三遊亭白鳥さんは、落語においても対話が大切で、それはお客様を知ろうとすることだといいます。お客様にネタをぶつけても笑いを取ることはできず、お客様が受け入れ易いように話すことが大切だと言います。白鳥さんは、今でも高座を全部録音し笑いが取れなかった部分については、手直しを続けているそうです。政治家のお客様は国民であり、政治家は国民のことを知らないのではないかと指摘しています。さらに、寄席のお客様なら寝てもよいが、国民が政治家に任せて居眠りをしているようではだめで、国民も対話に関心を持つ必要があると述べています。国民も、政治と対話をすることを諦めてしまっているのかもしれません。その結果、政治と対話をやめてしまったとしたら、国民にも責任の一端があります。

三色の帽子と国会

次は、いよいよ私の番です。私は、3色の帽子を紹介しました。赤い帽子は、自分の意見ばかりを押し付ける動物。青い帽子は自分の意見を口にせず、言いなりになる動物。黄色い帽子は、意見を言ってお互いに話し合う動物。ピースフルスクールで子どもたちは、けんかをしたり、人の言いなりになるのではなく、話し合う黄色い帽子がみんなを幸せにすることを学びます。意見が違うのは悪いことではなく、当たり前のことだから、意見が違っても怒らないようにすることが大事だと教わります。子どもたちは、怒ったときには深呼吸したり、ぬいぐるみを抱いたりして心を静めることができることを知り、日々の暮らしの中で実践しています。この手法は、そのまま国会にも活用いただけるのではないかと提案しました。大人もまず深呼吸して心を落ち着け、違う人の意見を聴く所から始めれば、きっと対話力を上達させることができます。

対話が近道

みんなで一緒に何かに取り組んでいく際に対話が大切な役割を担います。はじめは違う意見を持つ人たちも、相手の意見に耳を傾け学びあう姿勢があれば共に歩む方策を見出すことができます。社会が大きく変化する今、政治が国民との対話を避けて物事を強行に推し進めても、ありたい姿に到達することはできません。複雑に絡み合った社会の形を変えるには、判断をすり合わせていく必要があるからです。国が大きな方針を打ち出しても、改革を伴う取り組みを実践するのは現場であり国民です。ビジョンなき取り組みがどのような結果になるのかは、誰もが経験済みではないでしょうか。対話は避けて通れない道であり、本当は近道であることに気づいて欲しいです。

日本の未来と対話

オリンピック後の日本にどれだけの選択肢があり、我々はどんな未来の日本を望むのか、よい事も悪い事も両方話すことができる社会が実現することを願っています。そのためには、誰もが、黄色い帽子になり、感情をコントロールして話を聞く力を磨くことが大切です。私が、ピースフルスクールを日本で広める活動を始めたのはこのためです。戦後の日本と違い、今日では企業や団体、個人の置かれている状況は多様です。夫々が声をあげる社会が共生に向かう姿は想像しにくいかもしれませんが、対立を恐れず対話することを通して見えてくる共通点がもたらす力は想像以上に大きいものです。解り合えないとあきらめるのではなく、対話を始める努力をしたいです。

 

バディウォークin ヨコハマ

4月22日に、育ちあう バディウォークin ヨコハマにボランティア参加しました。

主催は、一般社団法人ヨコハマプロジェクトです。ヨコハマプロジェクトの代表 近藤寛子さんはダウン症のお子さんを持ったことをきっかけに、この団体を立ち上げました。団体の目的は、ダウン症のある子どもとの出会いを通して、多様性に関心を持つ人たちを増やすことです。今年1月に、尊敬する経産省の知人から、「熊平さんと同じようなことを言っている人がいるから会ってみてはどうか」とご紹介いただき近藤さんにお会いして、すぐに意気投合しました。ヨコハマプロジェクトは、ダウン症を持つ子どもの親が不安にならないように、国内外の専門家の指導を仰ぎ、冊子「ダウン症のあるくらし」を作成し配布しています。最初は、ダウン症の子どもの育て方についての情報が不足していて、近藤さん自身が不安になり情報を集めたそうです。その知識を自分のためだけに活用するのではなく、みんなに共有していく姿もとても素敵です。こうして、彼女は、ダウン症の子どもを持つ家族との対話を始めます。そして、バディウークin ヨコハマでは、家族同士の繋がりや、社会が多様性を理解するきっかけづくりに挑戦しています。

今年で3年目となる山下公園でのイベントには2000人近くの人が参加しました。ダウン症の子どもたちも元気いっぱいに楽しみ、ご家族の皆さんも素敵な笑顔でした。このイベントに参加し、心の繋がりのある家庭やコミュニティの輪が広がることが、多様性を包摂する世の中になる近道だと感じました。そこに対話力が加われば、誰もが幸せに生きる社会をともに創ることができるのではないかと思います。

【ダウン症とは】

私たちの体の細胞には、合計23対46の染色体が備わっています。このうち、21番目の染色体が2本ではなく3本あることからおこる症状をダウン症といいます。その理由は解っていないのですが、その出生率は民族によらず、だいたい1000人に1人だといわれています。

【バディウォークとは】

ダウン症のある人と一緒に歩く、世界的なチャリティーウォーキングイベントで、全米ダウン症協会が1995年にニューヨークで行ったのが始まりです。現在は世界中に取り組みが広がっています。昨年11月には、渋谷でも開催されたそうです

冊子「ダウン症のあるくらし」に関するお問い合わせ先 info@yokohamapj.org

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