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ニッポンの学ぶ力

2017.5.27 文部科学教育通信掲載

昨年より、ニッポンの学ぶ力を変える活動に取り組んでいます。21世紀は、誰もが善い未来を創造する力をもち、イノベーターやチェンジメーカーになることが許される時代です。テクノロジー革新が進み、人類が国境を越えて地球課題の解決に取り組むことができる前例のない時代です。その環境を活かすために、私たち大人も変わることが求められています。

企業と教育のエコシステムをつくる

21世紀を生きる子どもたちに必要な力は、2002年にOECDがキーコンピテンシーとして世界に発信しています。21世紀未来研究所では、キーコンピテンシーの中でも、特に日本の教育に欠落している3つの力に焦点をあてワークショップを実施しています。自分を知る力、多様性を包摂する力、前例を踏襲しない学力の3つの力は、誰もがイノベーターになるために必須の力になります。また、言うまでもなく、この力は子どもだけでなく21世紀に生きる大人も身に付けておくことが大切な力です。

ニッポンの学ぶ力を変えるために私たちが最初に対象と考えたのは企業です。企業で働く多くの人たちは親なので、親を通して子どもたちに学ぶ力を届けてもらおうと考えました。また、子どもたちは、文化の中で育つので、親がロールモデルとなることが最も教育効果を高めます。このため、親に実践者になってもらうことも狙いとしています。そして、多くの親たちが新しい教育観を持つことで、学校現場が安心して変わることができる環境がつくれると考えています。多くの企業の皆様とお話をさせて頂く中で、たくさんの共感を頂いています。

なぜ学ぶ力を変える必要があるか

21世紀に入り変化のスピードが加速しています。指数関数的に進む技術革新は、ドックイヤー、マウス(鼠)イヤーに例えられます。また、AIの進化の結果、人間の仕事の約半分を機械が担う時代が到来します。

国連も持続可能な開発に向けて、2015年にSDGs(持続可能開発目標)を発表しました。2030年をゴールに17の目標を達成するために、世界中の政府、企業、NGO、NPOがアクションを起こしています。これにより、企業の活動目的に収益と成長以外にも、持続可能開発目標が加わることになります。

かつては先進国を中心に発展した経済の主役が、途上国に移る時代です。2017年1月に行われたダボス会議では、イギリスやアメリカの保護主義が世界情勢の不安要因になる中、中国の習近平氏が、持続可能な経済成長のために世界が共に歩む重要性を語りました。世界のリーダーに相応しい習氏のメッセージは、欧米諸国のリーダーたちの共感を得ました。

世界の移民総数は、日本の人口をはるかに上回り、現在、2億4000万人を超えています。そのコストの増大は政治の世界にも影響を与え、イギリスがEUを離脱し、先進国のリーダーたちの足並みにもばらつきが出始めます。しかし地球がフラットに繋がる時代には、他国の紛争や対立を他人事と考えることはできません。

この4つの要素は、相互に関連し私たちの社会のあり方を変える働きをしています。これまでと同じ考え方では、平和を維持することも、経済の発展を維持することも、幸せを維持することもできません。

このため、世界では、国境を越えて人類が共生する新たな社会創りに向けて、人々のイノベーション力を高めていく動きが加速しています。その際に強い味方になるのがテクノロジーです。オランダでは、市民がテクノロジーを活かすための支援を行いスマートシチズン(先端技術を用いる市民)を育む取り組みが進んでいます。ドイツでは、第4次産業革命という国家戦略を掲げ、大学、企業、行政が一体となり、テクノロジー教育を始めています。

時代錯誤の教育改革

そんな中、日本の教育改革が時代錯誤であることに危機感を覚えます。これは、行政だけでなく、市民の時代感覚のズレが大きな原因であると思われます。雑誌の記事を見ても「食える子どもの育て方」といった表題が目に付きます。子どもの幸せを願う親たちは、当然、AI時代にも、我が子が職業を持ち、幸せに暮らすことを望みます。しかし、これまでのように偏差値の最も高い大学に合格すれば幸せが保証される時代ではなく、親の不安は募るばかりです。こうした不安を商業主義が煽り、教育は更に破壊に向かいます。

これからの時代の教育は、ジョブシーカーではなく、ジョブメーカーを育てなければならないといわれています。そのためには、真の主体性、前例を踏襲しない学び、コラボレーション力など、これまでとは異なる力が必要となります。

時代が大きく変わる中、子どもたちの未来の幸せは、私たち大人が何を軸にどのような選択をしていくのかに大きく左右されると感じます。そんな中、世界では、大人が学ぶ努力を懸命にしている様子を垣間見ることができます。

例えば、問題を起こした時と同じ思考では問題を解決することができないというアインシュタインの言葉を引用し、前例を踏襲しない学びを奨励しています。また、誰もが予測できないことがあるという事例として、1980年代に「パソコンのメモリーは、640KB以上を必要としない」と発言したビル・ゲイツ氏の言葉を引用しています。こうして、前例を踏襲する考えは未来を正しく反映しないことを示し枠にはまらない発想を奨励しています。

20世紀の人類が作り上げた社会・経済・生き方が大きく変わろうとしている21世紀に、善いインパクトを与えるイノベーションを生み出す日本であって欲しいと願っています。

イノベーションを生み出す“ベース”を鍛える教育プログラム「OS21」で、大人の「学ぶ力」を変えていきます。

これまでの固定観念を壊し、柔軟な思考と能動的な学びの姿勢を育てる6つのワークによって

ビジネスパーソンの思考をベースアップします。

個人の変化が他者の変化や成長を促し、組織の力が上がっていきます。この「大人の変化」を、会社や家庭や学校へと広げ創造と自発的な学習を促す新しいニッポンの「学ぶ力」を育てていく。それが、私たちの使命です。

子どもたちの未来のために、大人も変わる時代です。みんなで一緒に変わっていきましょう。

 

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