skip to Main Content

シチズンシップを養う「みんなのみらいをつくる保育園」の誕生

文部科学教育通信No.407 217.3.13 掲載

認定NPO法人フローレンスが、2017年4月1日に法人として初めての0~5歳児までの認可保育園「みんなのみらいをつくる保育園」を江東区・東雲に開園します。フローレンスが2010年に待機児童問題の解決のために同地域で0~2歳児を対象とした小規模保育園「おうち保育園」を開園して約6年。2017年3月現在、都内に小規模保育園を13園運営しています。「みんなのみらいをつくる保育園」では、3歳児以降の待機児童問題「3歳の壁」の解決とともに、「自分たちのみらいは自分たちで創りだす」子どもたちのシチズンシップを養います。

今回は、この「みんなのみらいをつくる保育園」をご紹介いたします。

 

シチズンシップを育む新しい保育園

「みんなのみらいをつくる保育園」では、クマヒラセキュリティ財団が開発・展開をしているオランダ発祥のピースフルスクールプログラムを導入し、保育理念である「みんなのみらいをつくることに自ら参加し貢献しそして楽しむ心を育みます」のもと、シチズンシップ保育に挑戦します。さらに「今日やりたい遊びは?」「遠足はどこに行く?」など子どもたちだけで話し合い、意思決定をする「こどもミーティング」や、自分の気持ちを認識し表現する「感情カード」を取り入れ、好奇心や冒険心のある自分らしい子ども・他者を思いやることのできる子ども・自分で考え、表現し、行動できる子どもを育てます。

 

感情カード」で子どもの感情に寄り添う

朝、子どもたちが登園したら、その時の自分の気持ちを考えてもらう時間をとります。「今日もお友達とたくさん遊べるからたのしい気持ち」「お兄ちゃんとけんかしたからおこっている気持ち」「先生からほめてもらえたからうれしい気持ち」など、自分の感情を認識して、表現することを大切にしています。最初のうちはうまく気持ちを認識することができないこともあるかもしれませんが、毎日繰り返すことで自分には感情があること、お友達にも感情があること、そしてそれを尊重し合えることを経験していきます。「うれしい」「楽しい」などのポジティブな感情だけでなく、「かなしい」「おこっている」「つかれた」などのネガティブな感情も表現してかまわないという文化をつくることは、子どもたちの自己肯定感を高め、園がより安心で安全な場にすることができます。

まだ上手に話すことのできない小さな子どもたちにとって、感情カードを選んで表明することは、自分と他者が違うということを知ることにもつながります。仲の良いお友達であっても、感じ方は人ぞれぞれであること。自分に感情があるように、お友達にもお友達の感情がある。みんなそれぞれの感情を持っていることを知ることで、多様性にふれることができます。

みんなのみらいをつくる保育園では、他者を思いやることのできる子どもへの一歩は、自分と他者が違うことを知ることから始まると考えています。気持ちや意見が違うからといって、お友達でいられなくなるわけではないこと。周りにあわせようとして我慢したり、隠したりしなくていいことを日々の経験を通して学んでいきます。

 

子どもが今日の予定もみらいも決める「こどもミーティング」

みんなのみらいをつくる保育園では、輪になってお話をするサークルタイムの時間を大切にします。日本の学校では、スクール形式で先生の話を聴いたり、自分の意見を発表することがほとんどで、サークルになってみんなで話すという経験をすることがあまりありません。みんなのみらいをつくる保育園では、子どもたちの主体性を最大限伸ばすために、与えられた予定や未来ではなく、自分たちで考えて決めていくことを大切にしています。そのため「こどもミーティング」を毎日行うことで、みんなの顔を見ながら話し、考え、自分の意見を言い、お友達の意見を聴く経験を積んでいきます。

こどもミーティングで何が話し合われるのかはその日次第です。予めテーマを決めることはせず、保育者がファシリテーターとなって、自然に話し合いが進むようにサポートします。うまく話すのではなく、みんなの意見に耳を傾け、自分の意見も伝える経験を積むことで、子どもたちの共感性や内発性、創造性を高めていきます。

 

子どもたちの解決する力を培う「ピースフルスクールプログラム」

【「好奇心」「冒険心」のある自分らしい子ども・他者を思いやることのできる子ども・自分で考え、表現し、そして行動できる子ども】が、みんなのみらいをつくる保育園の保育目標です。その目標を達成するための手段として、シチズンシップ教育のピースフルスクールプログラムを導入します。

ピースフルスクールプログラムはオランダ発祥のプログラムで、5つの目標があります。

1.建設的に議論して意思決定をする

2.コンフリクト(対立)を自分で解決する

3.社会の一員としての責任感を持つ

4.他者を思いやり、多様性を尊重する

5.社会における自分の役割を知る

この5つの目標は、「みんなのみらいをつくる心」を育む上で非常に大切であると考え、4歳児・5歳児クラスを中心に取り入れていくことになりました。

 

ピースフルスクールプログラムの特徴的な学び

①自分の意見を持つ責任がある

子どもたちは、どんな時でも自分の意見を持つように努めます。たとえ「わからない」であっても、自分の意見を持つことに挑戦します。

②対立は悪くない

民主的な社会とは、多様な意見が存在する社会です。そのため、意見が対立することが前提となります。子どもたちは、自分の意見を持つこと、人の意見に対して反対の意見を持つことは悪くないこと(意見が違っていてもお友達でいられること)を学びます。

③コミュニティには共感がある

周囲の人に対して、素の自分を見せることを自分自身が受け入れられている状態を目指します。素の自分を見せても、周囲の人に受け入れてもらえる安心感があります。また、園やクラスといったコミュニティに共感があり、心と心がつながっていると感じられる状態を目指します。

④問題解決に取り組む

けんかは話し合いで仲直りすることを大切にしています。けんかしないように抑制するのではなく、けんかが起きた時に、自分たちで落ち着いて話し合って解決できるようになることを目指します。また、園やクラスの課題についても話し合って、より良くなるための方法をみんなで考えます。

 

導入前の研修

プログラムを子どもたちに実施する前に、みんなのみらいをつくる保育園の保育士やスタッフ対象に研修を実施しました。

研修では、「みんなのみらいをつくる保育園に通う子どもたちにどんな人に育ってほしいか」「園の保育方針とピースフルスクールプログラムにはどのような関係があるのか」「なぜピースフルスクールプログラムを園で実施するのか」について深く考え、対話しました。

また、模擬レッスンを行い、実際に子どもたちにレッスンを行う際にどのようなことに気をつけて実施すればいいのかも学びました。

いよいよ4月から開園の「みんなのみらいをつくる保育園」。この園に通う子どもたちがどのような人に育っていくのかをしっかりと追っていきたいと思います。

Back To Top