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2030年の企業、社会、人のあり方(その1)

文部科学教育通信No.391 2016.07.11掲載

未来の社会、未来に人、未来の教育のあり方の3つの視点で教育のビジョンを語れる社会を創るために、未来の企業、社会、人のあり方について考えました。今回は、2回シリーズで、その結果、明らかになった4つの異なる世界をご紹介したいと思います。

2030年の企業、社会、人のあり方に関する4つの異なる世界

未来に影響を及ぼす要因に関して、6つ領域の膨大なトピック(日本の人口減少、グローバル化、資源危機リスク、自然災害リスク、AIやロボットなどテクノロジーの進化等)から「確実なこと」は共通とし、「不確実かつインパクトが大きい要素」の組合せ方によって、2030年に起こりうる4つの世界を想像し、シナリオを描きました。これらのシナリオは「未来予測の正しい答え」を示しているのではなく、「未来をどう創っていくか」の問いです。

2030年 確実に/ほぼ確実に起こること

日本の人口減少、3人に1人が6歳以上の高齢者。
アジア、アフリカを中心とする世界の人口の増大と、都市部への集中。
グローバル化・国境を越えた経済活動の拡大と日本の存在感の低下。
資源危機リスク、食糧危機リスク、自然災害リスク、国際政治不安・テロリズム、金融危機の存在。
AI(人口知能)やロボットなどのテクノロジーの進化と職業の変容。
価値観の変化、ミネリアル世代の台頭。

不確実かつインパクトが大きい要素

企業経営のものさしが画一か、多様化か。
働き方が画一か、多様か。終身雇用や年功序列型賃金等の日本的雇用慣行が継続するか否か。

今回は、4つの異なるシナリオのうち、企業経営のものさしが画一である場合の2つのシナリオについてご紹介したいと思います。

5.png■ 高齢化社会と「20世紀型労働」神話の維持

安定的な雇用へのニーズは根強く、転職や起業を積極的に志向する人は少なく、ジョブ型雇用や兼業(副職)、リモートワークやワークシェアリングといった自由な働き方を求める声は小さい。

■「五輪ロス」と日本企業の構造的弱体化

企業においては、株主と短期的収益を重視するものさしが中心的に機能。短期視点での経営に偏っていた企業は「五輪ロス」により経営難に陥っている。一方で、 解雇規制が厳しく、リストラも限界。社員平均年齢は高くなるばかりだ。

■ イノベーション後進国・日本の「失われた半世紀」

働き方の自由・多様性・テクノロジーなど土壌づくりの面で立ち遅れた日本は、 イノベーション後進国に転落している。

■「三すくみ」の社会

一方、政府は、年金支払い費用・医療費で毎年巨額の財政赤字。政府・企業・市民の各セクターがビジョンを共有しないまま、自己の行動を最適化しようとした結果、「三すくみ」 状態によって構造改革が阻害されている。

図1.png図2.png
【2030年シナリオ② 個の台頭シナリオ ~大格差の発生とニッチの台頭~】

■ テクノロジーによる「働き方のシフト」と「消える職業」

個人が時代の変化をリードする社会。「テクノロジーの発達」が個人の働き方をエンパワーメントし、働き方の多様化が拡がる。常にライフスタイルを更新しようという志向があるミレニアル世代の影響力も大きくなっている 。一方で、ロボット技術やAI技術で代替され消える職業も。

■ オープンで柔軟な雇用制度・人事制度

企業も、女性、シニア、中途採用、ジョブ型雇用等多様性ある人材を活用。また、解雇の規制も緩和され、成長分野への柔軟な人材配置が進む。

■ “近視眼的”経営と個人起点イノベーション

企業の長期視点やサステナビリティへの志向は薄く、短期的収益・株主志向。イノベーションを生み出すのはテクノロジーを駆使した個人である。

■ “電気羊が人間を喰い殺す” 大格差の時代

「就労格差」が増大し、個人の力の差がより顕著に表れる弱肉強食の時代。また、財政負担は増大、格差の拡大と社会保障制度危機が時代の一大テーマとなっている。

次回は、企業経営のものさしが多様な世界における2つのシナリオをご紹介します。

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