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未来教育会議スタディーツアー報告会「21世紀型社会への教育イノベーション」 -日本・オランダ・デンマークのスタディーツアーをヒントに-

文部教育科学通信No.353 2014.12.8掲載

2013年6月に「未来教育会議」という、未来の社会、未来の人、未来の教育のあり方を多様なマルチステークホルダーで考え、一緒に豊かな現実を創造していくためのプロジェクトを、株式会社博報堂をはじめとする企業の方々と共に立ち上げ、2014年3月16日にキックオフシンポジウムを実施し、250 名を超える皆さまにご参加いただきました。

2014年は、未来教育会議に参加いただいているメンバー企業の皆さまと、教育機関への訪問や教育に関わる人々のお話を伺うスタディツアーを実施しました。

11月27日にスタディツアーの報告会と位置付けて、2014年度の活動の中間報告及び21世紀型社会への教育について考えるイベントを開催いたしました。

今回は、このイベントについてご紹介いたします。

 

未来教育会議のミッションとビジョン

未来教育会議は、私たちが創るべき「未来の姿」、未来を生きる人びとに「必要な力」、その「人びとを育てるための教育」についてマルチステークホルダーで考え、行動することをミッションとしています。

ビジョンは、以下の4点です。

  • 自立と共生が実現し、すべての人が自分を幸せにすることができる社会をつくる。

  • 主体的に考え、相互に関わり合い、問題解決できる力を持つ人を育てる。

  • 教育に関する柔軟性や自由さが担保されている社会をつくる。

  • 学校、家庭、地域、企業が共創して教育に関わり合う社会をつくる。

我々は、日本の教育の高度化と、それを実現するための教育システムの変容といったシフトを起こすために、次の3つのことを実現したいと考えています。

  1. 教育のシフトを実現するためのプラットフォーム構築

  2. マルチステークホルダーによるビジョン共有

  3. 新しい教育市場の創出

 社会とつながる取り組み

2014年、未来教育会議は、社会とつながり、マルチステークホルダーで未来の社会や教育のあり方を考える波を起こすため、次の3つのアクションを起こしました。

  1. 未来教育ライター

    未来の教育を創っていく取り組みを行っている様々な方々や組織を紹介する記事を書いていただくライターを公募しました。多くの応募をいただき、32名の方にライターとなっていただいています。素晴らしい取り組みを知った者同士が互いに結び付いていき、ライター自らの着眼点や表現力に富んだ記事を読む多くの人々に未知の世界の刺激を与えることがねらいです。

  2. 未来教育ワークショップ・コーディネーター
    ライター同様、ワークショップの開催をリードするコーディネーターを公募しました。コミュニティや組織内で、未来の社会・人・教育についての願いを共有し、未来への洞察・発想を行う “未来教育ワークショップ” を主催することが目的です。こちらは、53名の方に研修を受けていただいています。11月24日に「未来教育ワークショップ@建長寺」と題して、ワークショップが開催されています。

  3. 公開イベント
    2014年3月に実施したキックオフシンポジウム、4月の教育シンポジウム、11月のスタディツアー報告会など、マルチステークホルダーで未来の社会と教育について考えるイベントを開催しています。2015年3月には第2回の教育シンポジウムを開催する予定です。

 

企業との連携による取り組み

社会のあり方に強く影響しているのが企業であることから、未来教育会議は企業メンバーを募り、活動しています。現在の社会の課題と現時点で気になっている教育のことについて深掘るワークショップを5月に2度開催し、6月から9月の4か月間に国内20件、国外2件のスタディツアーを実施しました。10月には、スタディツアーで学んだことや気が付いたことを共有する会を設け、11月には3日連続で、「2030年の教育の未来」のシナリオを作成するアクションワークショップを行いました。半年間の活動を経た今、企業の皆さまからもアクションプランが出るなど、キックオフをした5月には想像できなかった変化が起きています。来年度も企業メンバーを募り、活動を続けます。

 

スタディツアー

企業メンバーと実施したスタディツアーの目的は、「今、教育システムに起きていること」を様々な教育機関を訪問し、教育に携わる人々のお話を実際に見聞きし、気付きを得ることです。スタディツアー実施前、このようなループ図を作成しました。

それぞれの立場で誰もが真摯に取り組んでいるにもかかわらず、部分最適化が進むことで教育システムの崩壊を加速していることがわかりました。

国内スタディツアーでは、様々な環境、取り組みを実施している公立・私立の学校6校、行政機関6件、地域で教育の活動を実践されているところ2件、教育系のベンチャー企業2件、教育系NPO3件、研究者お一人にお話を伺いました。

海外スタディツアーでは、オランダとデンマークを訪問し、様々な学校、教育機関を視察しました。

これらのスタディツアーから見えてきた課題が大きく分けて2点あります。

一点目は、システムの課題です。

先生が多忙化し、生徒と向き合う時間や授業準備の時間が減少しています。また、学習領域の膨張やダブルスクールが当たり前となった今、生徒も多忙化しています。しかし、学力保障の面では、8人に1人がレベル1以下とされ、就学援助を受ける子どもは7人に1人だということもわかりました。ますます教育格差は開いているのです。そして、一番のボリューム層である中堅普通科高校では、先生と生徒の意欲が下がっていることもわかりました。学校という様々なことを経験し、学習する機会に恵まれた場所で、とくに何もせずに3年間を過ごした生徒が社会を創っていくのです。社会に出てからの要求があまりに重たく、仕事が続かない、ニートになってしまう人もいます。

二点目は、イノベーションの課題です。

ICTが発達し、学習活動への活用や先生への仕事の活用を進めている学校と、そうでない学校の差が開いています。学力や学歴重視であった時代と異なり、現在は価値観の対立も起きています。日本なのか、グローバルなのか。主体性を重んじるのか、管理を強めるのか。多様性を重視するのか、画一性を重んじるのか。測定可能なものに頼るのか、測定不能なものを見ようとするのか。多くの学校が、より良い状態を目指して、バランスを取ろうとしていることもわかりました。また、海外との比較で気が付いたことは、ビジョンと一貫性が大切であるということです。先生・生徒・保護者が同じビジョンに向かって一貫性を持って行動できている学校は、かかわる全ての人がいきいきしていました。複雑な社会へ適応するための21世紀スキルを意識している学校とそうでない学校の差も大きく開いています。

未来教育会議では、これらのようにスタディツアーで学んだこと、気が付いたことをもとに、教育のシナリオプランニングを行っています。引き続き、活動をご覧いただけると幸いです。

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