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2020年管理職比率30%への道

文部科学教育通信NO.370 2015.8.24掲載

グローバル化が進む今日、世界の中でも後れを取っている日本における女性活躍に注目が当たり、労働人口の減少に端を発した女性活躍促進の動きが2014年に本格化しました。男女雇用機会均等法が制定されてから29年後のことです。

2020年管理職比率30%の目標に向けて企業の取り組みが活発化する中、昭和女子大学キャリアカレッジでは、女性の企業でのステップアップと起業を支援する取り組みを行っています。参加する女性の多くは、企業から多くの期待を寄せられた方たちです。10年前後、企業で働き、その功績が評価されている方たちですが、3年前には想像できないような突然の期待の寄せられ方に戸惑いを感じる人たちも多くいます。

その様子には、私自身が女性として、「社会は無責任である」と感じた経験と重なります。男女雇用機会均等法が制定された年にキャリアを始めた私たち女性は、クリスマスケーキと呼ばれ、25歳を過ぎると結婚に向けた強い圧力を感じ、結婚して子どもを産むと、「親が家にいないで、子どもがまともに育つはずはない」と言われ、働くことを良しとしない社会通念が存在していました。しかし、今日、労働人口の不足が企業の持続可能性を脅かすリスクと認識されるようになり、女性が、子どもを産んでも社会で活躍できるためのインフラ整備も進められています。私の短い人生の中でも、女性に対する社会の期待は180度変化しています。このため、女性には自分の意思で人生を選択することを勧めています。

男性管理職の本音

昭和女子大学キャリアカレッジでは、去る7月に特別企画として男性管理職向けワークショップを実施しました。「タテマエでは未来はつくれない!男性マネジメントが本音で議論する女性活躍の未来」と題したイベントの企画には、混沌とする女性活躍推進の現状を変えるために少しでも貢献したいという思いがありました。

突然始まった女性活躍促進の大きな動きは、女性のみならず男性管理職にとっても、パラダイムシフトへの挑戦です。ワークショップでは、男性管理職の皆さんの本音を伺いました。いくつか事例をご紹介します。

【男性管理職の悩み】

ライフイベントの影響男性管理職が抱える悩み男性社員と違い、結婚や出産などのライフイベントを無視できない。

育児休暇等によるキャリアの中断に配慮する必要がある。

感情的な発言が多い。

責任のある仕事に腰が引ける。

融通が利かない。

多角的なものの見方をしない。

どこまで昇進を目指しているのか解らない。

男性と違い、個々に違うため対応が難しい。

これまで同様、女性には補助的な仕事を任せてしまう。

男性上司ロールモデルによるパネルディスカッションでは、㈱日立製作所人財統括本部人事勤労本部長兼ダイバーシティ推進センタ長田宮直彦氏、㈱大京穴吹不動産PM事業部バケーションレンタル課長中村宇裕氏、富士通デザイン㈱ソフトウェア&サービスデザイン事業部チーフデザインディレクター平野隆氏をお招きし、ロールモデルの実践から学ぶ機会となりました。

【ロールモデルの意見】

女性・男性というよりも「個人」を見てマネジメントすることが重要

女性と男性のマネジメントにおける違いは「伝え方」であり、伝え方への配慮は重要。特にノンバーバルコミュニケーションは大切なポイント。

女性は、未婚、既婚、子どもの有無など就職した時代背景による差が大きい。

業務マネジメントは時間評価ではない。

昇進をしたがらないのは若い男性も同じである。

マネージャーを見て、あんな風にはなりたくないと思う女性は多い。

場所や時間の制限がなくなる方が女性は働きやすい。定時に帰宅し、子どもが寝てからメールを書く方が、女性にとっては望ましい。

最後には、女性を交えたディスカッションを行いました。社内の上司部下の関係では聞けないことも、オープンに質問し意見交換を行うことで、お互いの悩みや視点を共有する貴重な機会になりました。

女性活躍促進の価値

少子高齢化による労働人口の減少に端を発した女性活躍推進ですが、昭和女子大学キャリアカレッジでは、女性活躍促進がもたらす価値をより大きく捉えています。

成熟社会における日本の企業には、イノベーションにより持続可能な発展を実現することが期待されています。このため、イノベーションの源泉として多様性を活かす経営が求められています。しかし、工業化社会として経済発展を遂げた日本企業の競争優位性を支えたのは、画一性を重んじ、効率や生産性を優先した企業風土や終身雇用制度でした。この観点から考えると、女性活躍推進は、企業活動の前提となる価値観の転換を求めるものです。

約30年間進展のなかった人口の半分を占める女性活躍推進は、日本全体が多様性を活かす社会を実現する大きな一歩となるのではないでしょうか。その先には、社会全体が多様性の価値を信じ、人種、年齢、宗教等あらゆる多様性を活かす社会の実現が可能になることと思います。

21世紀に入り、産業革命以来人類が突き進んできた経済成長至上主義に警鐘が鳴らされ、持続可能な成長の実現や富の格差の是正などが謳われるようになりました。この新しい時代に、多くのグローバル企業が、地球規模で多様性を取り込み、イノベーションを実現する経営に舵を切っています。

女性の活躍推進は、多様性を活かす社会の実現であり、イノベーションの促進に繋がるアクションです。そのために、女性だけではなく広く社会全体に参画を呼び掛けていきたいと思います。研究によれば、女性の社会進出は、企業との関係のみで決まるものではなく、社会や家庭における期待によるところが多いと言われています。女性の社会進出は、企業のみならず、男性を含めた個人と社会のあり方にも変化を齎します。社会システム全体を俯瞰し、この変化を推進することにより初めて多様性を社会に取り込むことが可能となります。

国際経済フォーラムが毎年発表するジェンダーギャップレポートでは、教育、健康、経済活動、政治活動の4つの視点で各国における男女の差の評価しランク付けを行っています。日本は、105位という結果です。経済活動と政治活動における女性の参画が著しく低いことがその要因です。政治も経済も、男性社会を中心に成り立っており、この国の重要な意思決定に女性は参加してきませんでした。成熟化する社会において、生活者や子どもの声がこの国の意思決定に反映さえるためにも、女性の活躍推進は、大きな意味をもつのではないかと思います。

マイノリティの問題は、マジョリティの問題と言う言葉がありますが、日本のパラダイムシフトにもつながる女性の活躍推進に、一人でも多くの皆さんが関心を寄せてくださることを切に願います。

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