skip to Main Content

21世紀は女性の時代か?

文部科学教育通信No.347 2014.09.8掲載

今日、日本では女性の活躍を促進しようとする大きな動きがあります。

政府は、東京オリンピックが開催される2020年までに、25~44歳の女性就業率を73%(平成24年は68%)、管理職などの指導的地位に占める女性比率を30%とすることを目標に掲げています。OECD加盟国における管理職比率の平均は、30%を超えており、アジアにおいてもタイやマレーシア、ベトナム、中国、インドネシアに比べ、日本の比率は低いのが現実です。世界からは、生産年齢人口が急激に減少する中、女性の活躍促進が日本経済を救うという指摘もあります。女性管理職が著しく低いとう課題の解決は、日本の今後の経済成長のカギを握ると考える人々も増えています。

しかし、2013年度は企業の課長職以上に占める女性の割合が6.6%(2014年8月厚生労働省発表)と目標を大きく下回るなど、決して好調な滑り出しとは言えません。

 

世界における女性の社会進出においては、企業でのステップアップのみならず、起業という選択をする女性が多くいることに驚きます。世界では、女性起業家の比率は45%と高く、タイやシンガポールでは、女性起業家の方が男性起業家よりも多いそうです。

ビジネススクールにおける調査においても、柔軟に自分の都合に合わせて働くことが可能な起業は、時間の制約がある女性にとって望ましい働き方であるという報告が出されています。イノベーションが求められる日本において、女性の起業が世の中を変えるという時代の到来を予感させます。

 21世紀は女性の時代

多国籍企業を経営するグローバルリーダーや、社会問題を解決するチェンジメーカーが活躍する今日、エンパシー(共感力)が高く、物事に対して柔軟に対応することのできる女性の活躍に注目が集まっています。カリスマ的なリーダーが求められる時代が終わり、今日のリーダーにはチームビルディングやコラボレーションの力が求められます。

多様性を活かし、イノベーションを起こすために、リーダーに求められるコミュニケーションは、異質な人々の持つ違う考えや言語を前提としており、これまでとは求められるレベルが異なります。時代が求める共感力、チーム力、コミュニケーション力の高いリーダー像は、女性にとってとても親和性があります。

21世紀が女性の時代であることを象徴する3つの御話をしたいと思います。

 

一つ目は、ハーバード大学経営大学院(HBS)での取り組みです。2013年に共学50周年を迎えたHBSでは、女性入学者数を2014年には40%に引き上げました。HBSでは、女性の卒業生全員にアンケートを取り、これまでの女子教育を振り返り、女性の活躍促進のための教育の在り方を研究するプロジェクトがスタートしています。アメリカにおいても、フォーチュン500起業の内女性が最高責任者(CEO)の座に就いているのは、21社です。役員比率は14%、国会議員における女性の割合は18%です。女性の活躍が進んでいる米国においても、男女平等の社会は実現できていません。HBSでは、この事実を真摯に受け止め、女性のリーダー育成の在り方の何を変える必要があるのかを検討しています。

 

二つ目は、女性が本音を語れる時代の到来です。2011年2月に、アメリカ国務省政策企画本部長の要職を辞任したアン・マリー・スローターさんの「両立は無理」という発言がありました。この発言は、アトランティックという雑誌に、スローター氏が寄稿した記事の内容で、世界中で大きな反響を呼びました。プリンストン大学の教授として活躍されていたスローター氏は、「外交政策を司る仕事は、やりがいがあり好きだったが、思春期の2人の息子の母として、休みのない激務を続けることはできなかった。弁護士や投資銀行家、政府高官など、激務の仕事を持つ女性が、全て(キャリアと家庭)を手に入れることは不可能である」と言い、また、大切な子どもを優先することが信じられない社会はおかしいと断言しました。トップに上り詰め、輝かしいキャリアを持つ女性による「両立は無理」という発言は、1970年代に始まった女性解放運動に参加した、第一世代の女性たちが、口が裂けても言えない言葉であったことを知っている私にとっては、革命的な出来事でした。男女平等の社会は実現していませんが、女性の立場や声を、オープンに語れるところまで、女性の社会進出が進んでいると考えてもよいのではないでしょうか。

 

三つ目は、Facebookの最高執行責任者(COO)を務めるサンドバーグ氏が推進するLEAN INネットワークの存在です。サンドバー氏は、著書「LEAN IN」において、女性がキャリアを進める上で、社会が変わる必要もあるが、女性自身が心に持っている壁を克服する必要性があると語りました。女性は、自信に欠けていたり、必要な時に、前に出ることを躊躇したりする傾向があります。自分を売りこみ、相手に要求するということも、どこか遠慮してしまうことがあります。そのような女性の在り方を変えるために、サンドバーグ氏は、LEAN INという非営利団体を起ち上げ、積極的に行動する女性の支援を行っています。

サンドバーグ氏は、真の平等な世界が実現すれば、国家や企業全体としてのパフォーマンスが上がると主張し、女性自身の持つ心の障壁を取り除かなければ、女性が欲しいポジションを手に入れることはできないと、TED Talksでも語っています。

そのためには、女性がキャリアを積めるよう社会や組織の柔軟性を高めるだけでなく、女性自身が内面に作った壁を克服する必要があるとサンドバーグ氏は強調し、この精神的な壁は、社会的風潮によって成長の過程で自然に作られたもので、特に成功を手に入れる男性は周りから好かれる一方で、女性は敬遠される傾向があることが、女性が積極的にリーダーシップを取りに行きにくい大きな要因だと言います。(LEAN INより一部引用)
実際、フォーチュン500企業のうち、女性が最高経営責任者(CEO)の座に就いているのは21社となっており、女性の活躍が進んでいるとは言えません。

 社会にとってのメリット

日本と世界を比較するために、「The Global Gender Gap Report 2013」を見てみると、日本は105位で、前年の101位、前々年の98位に続いてランクダウンしています。1位は5年連続アイスランド、2位フィンランド、3位ノルウェー、4位スウェーデンとなっており、欧州が上位を占めます。このレポートは、経済活動の参加と機会、教育、健康と生存、政治への参画の4分野から男女格差を測定しています。日本の結果は教育と政治への関与においてスコアが前年より低下しています。
昨年2月に来日した、ビジネス書のベストセラー「ワーク・シフト 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図」の著者であるリンダ・グラットン氏が、プロモーションのために来日しました。その際に集まった人々から、未来の働き方について質問を受け、その返答として、帰国後、「日本企業と若者世代の未来」についてForbes誌に執筆した記事をご紹介します。「もし、日本の労働人口の半数が「大人対大人」として意見を聞いてもらえていないのだとしたら、これは日本企業で働く人々が「意思を持った大人」へと移行する妨げになります。」この移行をどう実現していったらよいかについて、「受け身のこども」から「意思をもった大人」へと移行するための私なりのアイディアを3つ記したいと思います。①視点を広げる②自分の意見を口にする③勇気を持って行動する

日本の若い世代が、入ろうとしているグローバルな世界では、視点を広げ、自分の意見を口にし、勇気を持って行動することが、ますます重要になってくるでしょう。日本の若者世代が変革を始めるのは今です。(引用翻訳: Lynda Gratton ”The Choices for Japanese Youth” (Forbes 2/11/2013))

 

 

 

Back To Top