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学習する組織 ラーニング フォー オールの魅力(2)

文部科学教育通信 No.328 2013-11-25に掲載されたグローバル社会の教育の役割とあり方を探る(38)をご紹介します。

 

第37回より3回連続で、NPO法人ティーチ フォー ジャパンの学習支援事業であるラーニング フォー オール(旧称:寺子屋くらぶ)の魅力をご紹介しています。

第37回は、ラーニング フォー オール(以下、LFA)が「学習する組織」であることをお伝えしました。

今回は、LFAが提供している研修の魅力をお伝えいたします。

 

● LFAの学習支援の特徴

LFAは、春季・夏季・秋季・冬季のプログラムに分かれて、通年で学習支援を継続しています。これは、より多くの学生に困難を抱えた子ども達と向き合ってほしいというLFAの願いはあるものの、1年中学習支援に参加するという長期間のコミットメントを学生に強いると、参加できる学生が減ってしまう懸念があるからです。

そのため、LFAはプログラムごとに学生教師を採用しています。

そうすると、一人の教師が子ども達と向き合える期間は、長くても3カ月となります。

この3カ月という短い期間で、子ども達との信頼関係を築き、学力を向上させ、学習習慣を定着させるためには、現場に入る前に相当な準備をしておく必要があります。

そこでLFAは、過去の学生教師のナレッジ(経験知)や、子ども達とのコミュニケーションの取り方、PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Actサイクル)を上手く回す方法などを、研修を通して学生教師に伝えています。

学習支援の質を担保し、学生教師が無駄な時間を過ごすことなく効率的に指導に集中できるようにするため、研修は外すことの出来ないLFAの強みであると言えます。

 

● LFAの研修について

LFAは、2010年に学習支援の活動を開始して以来、採用した学生教師に対して、指導を開始する前に20時間の事前研修、プログラムの期間中に20時間以上の中間研修を提供しています。

以下、LFAの研修が大切にしていることをまとめました。

1.子ども目線であること

全ての研修は、学生教師を通して子ども達に届けられるため、子どものことをよく考えた内容であることを重視しています。

LFAが学習支援をしている対象は、様々な困難を抱えている子ども達です。そのため、コミュニケーションの取り方や使用する言葉についても、その子ども達に受け入れられるものである必要があります。研修では、これらの情報を共有し、子ども達と学生教師がより良い関係を築けるベースをつくっています。

2.学生教師がすぐに実践できる内容であること

初めて現場で指導をする教師がぶつかる壁は、以前に別の教師もぶつかった壁であることが多いです。そのため、過去の教師がどういった工夫をして壁を乗り越えたか、どのようなやり取りをすることで子どもの学習意欲が向上したかといったナレッジ(経験知)を共有し、同じことで躓かないようにしています。

また、子どもとのコミュニケーションや指導の練習を、ロールプレイで実践します。
そのロールプレイに対して、過去の教師やスタッフがフィードバックをします。学生教師は、そのフィードバックをふまえ、より良いコミュニケーションや指導の仕方を習得していきます。何度も繰り返し練習することで、初回の指導でも緊張することなく、子ども達とのコミュニケーションがとれるようになります。

このような研修をすることで、継続して高いレベルの指導を子ども達にできるようになるため、子どもにとっても、学生教師にとっても有意義だと考えています

3.長期にわたって活用できる内容であること

2.では、すぐに使用できる実践的な研修の必要性を説明しましたが、それと同じぐらい重要なのが、時間をかけて学生教師に浸透し、LFAでの活動後にも使える内容であることです

例えば、LFAの研修では、リフレクション(内省)の重要性を何度も繰り返して伝えています。具体的には、研修後や指導後にリフレクションをして、次に活かす方法を考えるのですが、これはLFAのプログラムだけでなく、これからの人生のあらゆる場面で使うことのできるアクションです。

LFAは、学習支援を通して学生のリーダーとしての成長を支援していますので、プログラム後や学生が社会人になってからもLFAでの経験を活かせるように研修をデザインしています。☆使用 LFA研修画像2.jpg
 

● 研修での取り組みについて

LFAが研修でどのようなことをしているのか、一部ご紹介いたします。
指導前に行われる事前研修は、2日間で20時間、計18コマのレッスンを実施します。
各レッスンの内容を充実させることはもちろん、全研修を通して学習のサイクルにつながるように綿密にデザインされています。

事前研修1日目の前半は、学生教師もスタッフも初対面であることが多いので、チームビルディングやビジョン・ミッション・課題意識の共有を行います。

後半は、「LFAの研修について」でも挙げたように、学生教師としてのコミュニケーションの取り方や、リーダー/学習者としての教師の在り方についてなど、より実践的な内容を学びます。私が担当している研修は、この「リーダー/学習者としての教師」です。

事前研修2日目は、指導に直結する内容の研修を行います。

学生教師が担当する子どもの詳しい情報の共有や、指導案の作成法、学習習慣定着のための指導法、学習者目線の教授法、学習過程分析と仮説検証のための指導実践、そして指導のロールプレイを行います。

このように、研修初日には感情やマインドといったハートに働きかける内容の研修を多く行い、2日目は指導力を上げるための具体的な研修を集中して行っています。

初回の指導が終わったのち、中間研修という機会を設けています。

中間研修では、指導前に考えていたイメージと、実際に指導を行った時のギャップをどう埋めるのかを考えるため、課題解決のトレーニングを行います。

この課題解決の研修は、2011年頃までは事前研修に組み込まれていたのですが、実際に指導した経験がない状態(課題のない状態)でレッスンを受けても、なかなか定着しないため、初回指導後に研修を行うというシステムに修正されました。

前回、LFAが「学習する組織」であるとお伝えしましたが、このように、学生教師や子ども達のためにより役立つように、研修の構成も内容も常に磨き上げ続けています。既存の研修を見直し、新しい情報を取り入れることで、子ども達により良い学習支援を続けているのです。

 

● 「リーダー/学習者としての教師」という研修について

私は、2010年以降、事前研修の「リーダー/学習者としての教師」というパートを担当していますが、この内容も進化し続けています。その一部をご紹介します。

LFAと私は、リーダーを以下のように定義しています。

◇ 起こりうる最良の未来を実現するために、必要な気づきや能力を高め続ける「学習する組織」を創ることができる人

子ども達を導く教師こそ、リーダーであり、自らが学習者でなければなりません。

学生教師が上記のリーダーとなって子ども達と向き合うことができるよう、研修では、学生教師のロールモデルとなる「リーダーの物語」を共有します。

また、リーダーは文化を味方にし、学習する組織をつくることが必要であるため、ダイアログ(対話)の重要性やメンタルモデル(色眼鏡)に縛られないことの大切さ、チームビルディングについて詳しく説明します。

そして、学習者のリフレクションの大切さについても話しています。

今後も、子ども達へのより良い学習支援を目指し、研修内容を磨き上げていこうと思っています。

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