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未来をつくるリーダーシップ

文部科学教育通信 No.318 2013-6-24に掲載されたグローバル社会の教育の役割とあり方を探る28をご紹介します。

今、私たちを取り巻くあらゆる分野で、過去に類を見ない地球規模での大変化が、猛烈な勢いで起きています。これらの変化は既存の秩序や制度を揺るがし、様々な混乱や摩擦を引き起こしています。そのような中、「これまでのやり方が通用しない」「何とかしなければ思っていても、どうすればいいのかわかない」と、多くの人たちが、組織や社会の閉塞感と自らの無力感や方向感の喪失を感じているのではないのでしょうか。世界では、意識の高い人たちが、国や社会の変革に動き始めていますが、日本では残念ながらそのような活動が顕著ではありません。

こういった状況を打破し、日本が夢と希望が溢れる人々の社会となるように、私は、佐々木繁範氏*1、満田理夫氏、宍戸幹央氏らと一緒に未来をつくるリーダーを育てるためのプログラムの開発を始めました。この活動をアンビショナーズ・ラボと名付けていますが、その初回の試みとしてリーダーシップ育成や組織・社会変革、起業に興味のある方々を対象にワークショップを6月1日、2日と二日間に亘り、開催いたしました。今回はワークショップでご紹介した、未来をつくるリーダーシップに必要な「8つの力と4つの価値観」をご紹介しましょう。

このような地球規模での大変化の時代を生き抜くためには、問題を解決する力、創造する力、変わる力が必要です。組織や社会をリードする人たちや、未来を担う人を育てる教育者たちが、次に挙げる「8つの力と4つの価値観」からなる未来をつくるリーダーシップ能力を高めることが必要である、と考えます。

第1回 ワークショップ 写真①.jpg

未来をつくる8つの力と4つの価値観

<8つの力>

①真の自分を生きる力

人は心から望むことをする時に大きな力を発揮し、これが未来をつくる原動力となります。リーダーは、多くの人たちが、真の自分を生きられるように、使命を見つける手伝いをし、その実現を後押しする力を持つ必要があります。

②心を突き動かすメッセージ発信力

リーダーは、人々の心を突き動かすメッセージ発信力を持つ必要があります。未来をつくるためには、ビジョンを発信し、共鳴する仲間をつくり、力を合わせて事に臨むことが大切です。そのためには、論理的に、分かりやすく説明するだけでなく、人々の心に火をつけ、心と心をつなぐメッセージ発信力が求められるのです

③自らの意志で動く強いチームを創る力

リーダーには、自らの意志で動く強いチームを創る力が必要です。未来をつくるためには、個を超えたチームの力が必要だからです。夢とビジョンと目標を共有し、一人一人が自らの役割を知り、自らの意志で、目標の達成にコミットしていくチーム、強い信頼関係を土台に、互いの意見の相違を恐れず、オープンな議論ができるチームを創る力が求められます。

④新しい価値を生みだす対話力

リーダーには、新しい価値を生みだす対話力が必要です。多様な経験や専門性を持つ人同士が、お互いを尊重し、安心して意見をぶつけあい、学びあうことを通じて、新しい価値が生みだされます。メンバーがお互いに相手の話に耳を傾け、いったん自らの意見を手放して目的に必要なことは何か?と考える<傾聴と内省>を通じて、新しいアイデアを生みだす対話を促す力が求められます。

⑤創造的な問題解決力

リーダーには、創造的な問題解決力が必要です。未来に向かう過程では、あらゆる分野の既存の秩序にとらわれることなく、論理的に考える力、複雑にからみあった全体像を把握する力、過去にとらわれない新しい正解を生みだす力が必要です。ロジカル思考、システム思考、デザイン思考を駆使して、創造的に問題を解決する力が求められます。

⑥自ら学び進化する強い組織をつくる力

リーダーには、自ら学び進化する強い組織をつくる力が必要です。未来をつくるためには、新しい未来を生みだす意志と、過去のとらわれから脱却し、常に新しいものを受け入れ、自ら変わる力が求められます。ビジョンを共有し、自ら学び、常に進化する強い組織を築き上げる力が求められるのです。

⑦学習する力

リーダーには、自ら学習する力が必要です。未来をつくるためには、過去にしばられず、常に新しい見方を手に入れる必要があります。また、多様性から新しい価値を生みだすことが大切です。それゆえ、好奇心を持ち、異質なものから学び、自らの思考や行動を省みて、自らの枠を広げ、成長する。このような姿勢で行動し、進化を遂げる力が求められます。

⑧育成する力

リーダーには、人を育成する力が必要です。自ら学び進化する強い組織をつくるためには、学習する力を持つ人を育成することが大切です。ありたい姿になるためのチームとしての成長課題を明確にし、伴走者としてメンバー個々の成長を支援するというような育成力が求められます。

 第1回 ワークショップ 写真②.jpg

<4つの価値観>

①人間の創造力と無限の可能性を信じる

現状の閉塞感を打破し、突破口を開くためには、チームメンバー個々の思考力・発想力の強化や意識改革が必要です。チームの創造力を強化するためには、創造力発揮のための土壌づくりとメンバー相互の信頼関係を構築する土台づくりがリーダーには求められます。

②他者への共感を大事にする

リーダーには、他者の状況を自分の事のように感じる共感力を持つことが必要です。既存の商品・サービスでは満足しない人たち、人口減少と高齢化という厳しい時代を生き抜かなければならない若い世代、大きな生活上の問題を抱えている人たち、このような人たちが置かれた状況に深く共感する力が、イノベーションのみならず、身近な商品開発にも不可欠です。より良い社会の実現に向けて、頭だけでなく、心も体も使って相手を理解する力が求められるのです。

③多様性を尊重する

リーダーには、多様性を尊重する姿勢が必要です。世界には様々な人々が様々な文化背景と価値観を持って生活しています。多様性を尊重し、価値あるものとして受け入れる気持ちがなければ、ますますグローバル化する社会ではリーダーとして活躍していくことはできません。また、多様性を尊重する気持ちがなければ、新しい価値を生みだすこともできません。多様性が安全に存在できる環境を作る力が求められます。

④倫理観を大事にする

リーダーは、確固とした倫理観を持つことが必要です。リーダーは倫理的な行動を遵守し、他者の模範的なモデルとなることが求められています。また、自分たちのチームや組織の偏狭な利益だけでなく、社会の善にどのように貢献するかを考慮することが求められます。目的の正しさを常に考えて行動する力が求められるのです。

 ワークショップ写真③ 差し替え.jpg

本プログラムの設計において土台としたのは、OECDが提唱する21世紀を幸せに生きる力(キー・コンピタンシー)です。若者が、その力を身に付けるためには、周囲の大人たちが実践者である必要があります。多くの実践者を増やし、子どもたちが幸福に生きる力を身に付けることができる国にしたいと思い活動を始めています。今後、アンビショナーズ・ラボの高校生・大学生向けワークショップを展開していく予定です。

*1 佐々木繁範氏: ロジック・アンド・エモーション代表、リーダーシップ・コミュニケーション・コンサルタント、ハーバード大学院修士卒、著書に「思いが伝わる、心が動く スピーチの教科書」(ダイヤモンド社、2012年2月)

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