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パートナーシップ フォー 21st センチュリー スキル(P21)

文部科学教育通信 No.276 2011-9-26に掲載された脱工業化社会の教育の役割とあり方を探る(7)をご紹介します。

 

2010年に、システム思考の研究会に参加し、非営利団体「パートナーシップ フォー 21stセンチュリー スキル(P21)」の代表ケン・ケイ氏による基調講演を聞く機会がありました。

この団体は、全ての子供たちが21世紀に相応しい教育を受けられるようにという目的で2002年に設立されました。子どもたちが、将来グローバル経済社会において活躍できる人材になること、そしてアメリカ合衆国の発展に寄与してくれる事を願い設立されました。子どもたちが、将来、自分に合った職業を選択し、キャリア開発を行えること、私生活においても、幸福な人生を送るために、21世紀のスキルを持つことはとても重要であると、ケン・ケイ氏は述べています。

設立当初のメンバーには、合衆国の連邦教育省をはじめ、アップル、デル、マイクロソフト、AOL、SAPなどのIT業界の著名企業が名前を連ねており、これらの企業が21世紀型の教育に関して大きな関心を寄せていたことがわかります。現在でもアップルやデルのほか、ウォルトディズニー、ヒューレットパッカード、レゴ社など40社が審議会のメンバーになっています。

P21は、21世紀のスキルを体系的に整理し、既存の学校システムへの導入の仕方を明らかにしています。 主な活動内容は出版物の発行、無料オンラインツールの提供、21世紀型教育の研修事業を行うほか、米国内の各州と協同して、21世紀型教育を広めるための新基準の設定、プログラム開発やアセスメント設計などを行っています。現在、16州が、州単位で21世紀型の教育を導入しています。

 21世紀のスキルと言えば日本では、文部科学省の「生きる力」や、経済産業省の「社会人基礎力」などがあります。文部科学省の「生きる力」の中で重視されている基礎的な知識・技能の習得と思考力・判断力・表現力の育成や、経済産業省の「社会人基礎力」の中に明記されている、主体性や考え抜く力、創造力、チームで働く力など、共通するものがあります。異なる点は、米国では州単位で、21世紀のスキルを導入する仕組みが用意されているところです。仕組みの中核にあるのがマイルガイドと呼ばれる冊子です。学校は、マイルガイドを参照に、初期段階から完成までの各ステップを明らかにした上で、21世紀型教育カリキュラムを導入します。

21世紀型教育カリキュラムにおいても、教科教育はカリキュラムの中心にあります。どんな21世紀のスキルを教えようとしても生徒が基礎となる教科の知識・理解を持たないところではうまく行きません。クリティカルに考え、効果的にコミュニケートする生徒は基礎となる教科の知識を土台として持っていなければなりません。全ての21世紀のスキルは基礎となる教科の中で教えられるべきであるというのが、この団体の主張する考え方です。

読書、数学、科学は生徒の学習能力の基礎です。しかし、明日のリーダーとなる生徒たちは、グローバル経済の中で活躍するために、他の知識とスキルを必要とします。たとえば、グローバルな視点で物事を捉え、他者と協働し、会話する能力、問題を分析し、取り組む能力などです。それらの能力は我々の世界を取り巻く問題に対し革新的な解決方法を生み出す、クリティカルな思考と問題解決力を土台としていなければなりません。全てのこどもたちにこれらのスキルをマスターさせるために学校は重要な役割を果たす必要があります。

 P21の提唱する21世紀の学習領域

P21が提唱する21世紀の学習領域は、3つのRと4つのC、基礎科目と21世紀のテーマに分類されます。

21世紀の学習のフレームワーク.png

3つのRと4つのC
P21が最も重視しているのは3つのRと4つのCです。3つのRとは、読み、書き、代数のことであり、4つのCとは、クリティカルな思考と問題解決力、コミュニケーション、コラボレーション、創造性と革新性のことです。

基礎科目と21世紀のテーマ
基礎となる学習科目のマスターが21世紀の学習の基礎となっています。基礎教科とは国語、外国語、芸術、数学、経済、科学、地理、歴史、政治と市民活動を指します。学校は基礎教科の習熟を重視しながら、21世紀に求められるテーマを統合して教えていきます。21世紀のテーマとは、世界についての知識、財務・経済・ビジネス・起業の知識、市民としての知識、健康についての知識、環境についての知識です。

ますます複雑化する 21世紀の生活と仕事環境に向けて準備している人とそうでない人の間で大きな差が出るのが、学習能力とイノベーションのスキルです。創造性とイノベーション、クリティカルな思考と問題解決能力、コミュニケーション力、コラボレーション力を指します。また、21世紀を有効に生きるために、市民は、情報リテラシー、マスメディアリテラシー、ICTリテラシーのような機能的でクリティカルな思考スキルを持っているべきです。

今後、ますますグローバル化する社会において活躍するためには柔軟性と適応力、主体性、社交的な異文化対応力、リーダーシップや、社会的責任に対する認識などが、重要な役割を果たします。

P21は21世紀の学習をスムーズに教えるために、以下のような手順を奨励しています。

21世紀の学習導入の手順

1. 教育界、ビジネス界、コミュニティのリーダー、両親、生徒など全ての関係者に21世紀の学習のビジョンを理解し、信じてもらう必要があります。

2. 地域ごとに優先されるべき科目は違いますが、基礎教科の中で教えられるべきです。各地域では、現実的なゴールを設定し、最も優先順位の高いニーズから始めることが重要です。

3. 全てのスキルの中で、クリティカル思考と問題解決能力を優先してください。多くの地域でこれらの思考スキルを中心に導入を始めています。

4. 自分の地域が21世紀型教育の完成に向けてどのくらいの位置にいるかを見るためにマイルガイド自己診断を使ってください。

5.21世紀型教育を実行するのは、なかなか大変なことです。地域の優先順位とマイルガイドの自己診断結果に基づき、明確な実行プランを作成しましょう。

6. P21は21世紀において生徒が仕事や生活の両面で成功するためのツールとしてマイルガイドを提供しています。

P21の活動内容にご興味をお持ちの方は以下のサイトをご覧下さい。http://www.p21.org/ オンライン・ツールの項目からマイルガイドが無料でダウンロードできます。

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