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学習理論

ラーニングフォーオールの活動を通じて、TFAが蓄積した教師育成のナレッジを学んでいます。

その中の一つが、学習理論です。教師は、学習者の学習を支援する役割を担います。効果的な教師になるためには、学習者と学習についての正しい認識を持つことがとても大切です。学習理論を知っていると、授業や指導を工夫する際にも、科学的に行うことができます。 

以下の内容は、Teaching as Leadershiphttp://www.teachingasleadership.org/ の情報を抜粋したものです。詳細は、上記サイトをご覧ください。

 

【学習理論キーコンセプト】

①ブルーム理論、②マルチプルインテリジェンスと学習様式、③記憶理論、④認知発達の4つが学習計画、教育設計を考える上での基礎になります。
①ブルーム理論(認知理解を分類する6段階の階層)
1.知識 Knowledge
2.理解 Comprehension
3.適用 Application
4.分析 Analysis
5.統合 Synthesis
6.評価 Evaluation
②マルチプルインテリジェンスと学習スタイル
マルチプルインテリジェンスとは、生徒には多様な知性(言語的知性、論理・数学的知性、空間的知性、音楽的知性、身体的知性、対人的知性、内省的知性)があり、その知性の強弱と組み合わせが生徒の個性であるという考え方です。学習スタイルとは、新しい知識を取り入れるのに生徒によって学びやすいスタイル(視覚型、聴覚型、接触/運動感覚型)が異なるということです。
③記憶理論
生徒の知識を短期記憶から長期記憶に移動させる方法。鍵となるやり方は、繰り返し、以前の知識への紐づけ、記憶の整理、新しい情報の加工 などです。
④認知発達
全ての子供たちが、同じ速さで発達するわけではありませんが、生徒のスキルや能力は、学年ごとに、認知、身体、社会面でほぼ同じような経路をたどり発達していきます。
【ブルーム理論(認知理解の6レベル)】
ブルーム理論6.gif
【ブルーム理論を教室でどう用いるか】
一般的に言って、ブルーム理論は、学習目的を構築するために有効な考え方です。具体的には、(1)ブルーム理論を使って生徒に深い理解を促すことができる、(2)学習目的を整理するヒントが得られる、(3)学習目的を教えるベストな方法がわかる。 以上のような利点があります。
(1)ブルーム理論の6段階を、学習目的の達成難易度を量る判断基準として用いることができます。この分類法を用いれば、あるテーマや科目について、生徒を全てのレベルでの深い理解に導くことができます。 
生徒に高い階層の知識を学ばせることが有効な理由は、
・ 学校の先生が作るテストは階層の低い部分(知識、理解、適用)での理解を評価するものですが、生徒は高いレベル(分析、統合、評価)の内容を学習することにより、学んだことの記憶を長期間保持できます。
・ 高い階層での知識の方が他の階層にも応用が可能です(丸暗記は役に立ちません)。
・ 低い階層での学習は実社会では、あまり役に立ちません。
(2)ブルーム理論の階層に従うことにより、少しずつ認知理解の階層のはしごを登っていくことができます。
生徒が、抽象的な概念を作り上げ、知識を完璧にマスターするには、何度となく具体的な内容に触れ、問題を解く必要があります。低学年で低い階層の能力を扱うことは問題にはなりませんが、学年が上がっても事実の学習にのみ終始する先生がいることは、問題となります。
(3)ブルーム理論は先生が具体的な教授目標を考えるのに有効なツールです。ブルーム理論を用い、適切な難易度の学習目的を設定し、授業を展開することができます。
例) 知識レベルでの情報を覚える ⇒ ドリルと練習のアプローチ
   理解レベルの情報を知る ⇒ 例を挙げるなど、理解がより深まるアプローチ
   情報を適用する ⇒ 情報の適用方法を教え、例を豊富に挙げる
事実を教えられただけでは、生徒はその情報を実際に適用することができません。民主主義の概念を教えられただけでは、実際に民主主義がどのようなものか、理解できません。民主主義を学ぶためには、反民主主義の例を学ぶ必要があります。

【マルチプル・インテリジェンス】

①言語的知性(Word)
   言語を巧みに操作し、効果的に表現する力。
   スピーチやディベート、言葉遊び、詩作などが得意。

②論理・数学的知性(Logic and Maths)
   数を操作したり、論理的に考える力。
   数学、計算、分析、分類など、論理的思考を必要とする問題が得意。
③身体的知性(Body)
   身体を巧みに操作し、表現する力。
   運動、ダンス、演技などが得意。
④音楽的知性(Music)
   音楽を使って巧みに表現できる力。
   作曲、歌が得意。
⑤空間的知性(Space)
   ものごとをイメージしたり表現できる力。
   絵画、彫刻、映像化が得意。
⑥対人的知性(People)
   他人の感情や考えを理解し人間関係を築く力。
⑦内省的知性(Self)
   自分自身を理解し、感情、思想、思考、価値観などを認識できる力。
⑧自然認識知性(Nature)
   自然を認知し共存できる力。
   動物の飼育、植物の栽培、自然観察などへの関心が高い。
【学習スタイル】
生徒は自分に最も合ったやり方で情報を取り入れます。全ての生徒のスタイルに合わせようとすると、授業が混乱してしまうのではないか、と心配する声もありますが、先生は一つのスタイルに固執することなく、様々なスタイルを取り入れることが、生徒の理解や記憶の向上につながります。
例えば、植物の細胞の説明を読むよりも実際に顕微鏡で細胞を観察する、シンフォニーについての文章を読むよりも、実際にシンフォニーの音楽を聞いてみる、分数を教えるのに、オレンジを切り分けてみるというようなやり方が実際に有効です。
■ 視覚型
・・・”見て”情報を取り入れます。視覚学習者は、教科書や板書を思い出して事実やコンセプトを覚えます。教科書、図、写真、地図なども、視覚学習者を助けるよいツールです。
- 視覚型の強み

  • 読み書きしたことを覚えている
  • 目で見ることのできるプロジェクトやプレゼンを喜ぶ
  • 図、チャート、マップをよく覚えている
  • 見たときに最も良く情報を理解する
■ 聴覚型
・・・”聞いて”情報を取り入れます。聴覚学習者は、先生が話している時、声を出している時、音楽を奏でている時、集中できるように能力開発する必要があります。中には音に敏感すぎて、静かでないと集中できない生徒もいます。
- 聴覚型の強み
  • 聞いたこと、言ったことを覚えている
  • 教室や小グループでの話し合いが好き
  • 口頭での指示を良く理解する
  • 聞いたときに最も良く情報を理解する 
■ 接触/運動感覚型
・・・ものにさわったり、身体を動かしたりして情報を取り入れます。しばしば、このタイプの生徒がいることが忘れられがちです。
- 接触/運動感覚型の強み
  • 手や身体を使って自分で経験したことを覚えている
  • 道具を使ったり、実際に身体を使って参加できる授業を喜ぶ
  • 一度やってみて、やり方を覚える
  • 運動神経がいい
【記憶理論】
人間の記憶について理解しておくことは教師にとって、とても役に立つ知識の一つです。理解させるということは、生徒に単に情報を与えるだけでなく、短期記憶から長期記憶へと移す手助けをすることです。
- ワーキングメモリ(作業記憶)・・・短期記憶、新しい情報をしばらくの間とどめておきます。情報がワーキングメモリにとどまっていられるのは、積極的に活用されている間だけです。
- 長期記憶・・・情報を日、週、月、年、生涯という単位でとどめておける記憶の倉庫です。
- 短期記憶を長期記憶に変える有効な方法としては、次のようなものがあります。
  • 様々なやり方で、繰り返し唱えさせます。
  • 以前の知識に紐づけさせます。
  • 記憶の整理・・・新しい情報を覚える過程と覚えるために整理したものの両方が記憶に役立ちます。
  • 情報の加工・・・分析したり、批判したりすることによって情報が長期記憶に移動しやすくなります。

記憶理論.gif
【認知発達】
認知発達の核となる考え方は、「全ての子供たちが、同じ速さで発達するわけではないが、成長の過程は予測可能であり、生徒のスキルや能力は学年ごとに、ほぼ同じような経路をたどりながら、認知、身体、社会面での発達を遂げていく」です。
1. 年齢により、生徒の思考は変化する
一般的には生徒はだんだんと複雑な考えや抽象的な考えを理解できるようになります。低学年では、比ゆ的な表現は理解が難しいですが、思春期を経て複雑な問題解決ができるようになります。
2.生徒は積極的に意味づけをする
生徒は、知識を消極的に受け入れるのでなく、積極的な意味づけを行います。生徒は、新しい知識を学ぶとすぐに分類したり、既に知っている知識と結びつけたり、身近な世界にあてはめて考えます。
3.生徒の認知発達は以前に得た知識を土台とする
新しい知識は、生徒が以前に得た知識を土台として積み上げられます。生徒が説明の基礎となる知識を持たない限り、新しい知識の説明は役に立ちません。それゆえ、教師は、生徒に様々な経験や考え方に触れさせなければなりません。
4.チャレンジングな課題を与えて認知発達を促進させる
生徒の認知経験を上げることは、生徒の一般的な認知発達に影響を及ぼします。生徒によって知識レベル、受け入れレベルに違いはありますが、全ての生徒がチャレンジングと感じる授業を構成するのが教師の使命です。
5.社会的関わりが認知成長を促す
生徒が社会学習や観察から学ぶことは数多くあります。生徒は自分の考え、見方、信念、思考過程を仲間や周りの大人たちと共有することによって、多様な見方や考えが身につき、自分の理解の欠点や欠落部分がわかるようになります。
【小学校低学年の認知発達(Pre K~3年)】
  • 小学校低学年(年長~3年生)の生徒は読み・書きを覚え、急速に概念、言語理解が発達します。
  • 身体の発達には個人差があり、運動神経が急速に発達しますが、細かい運動神経の発達と言語面では、男子より女子の方が、成長が早いです。
  • エネルギーが高く、自己規制能力がまだ発達していないので、興味のないことに集中するのは難しい年頃です。
  • 社会的に自立することを覚えます。社会性を育み、新しい経験を模索するためのいろいろな「遊び」は重要です。
  • ある時期になると状況を他人の目で観察できるようになりますが、年少~1年生の間は難しいです。
  • 大人の考える理屈が、だんだんとわかるようになります。

小学校低学年.gif

【小学校高学年の認知発達(3年~6年)】

  • 小学校高学年(3年-6年)では、以前よりも頻繁に抽象的概念(例:初歩的な代数)を扱うようになりますが、まだそれほど多くはありません。一方で、生徒のコミュニケーションスキルは書き言葉、話し言葉、共に急速に発達し、生徒の発達障害などの認知スタイルの違いが顕著になります。
  • 身体の成長もゆっくりと着実に現れ、外見を気にするようになり、大人ではなく仲間が関心の中心になります。高学年になると特に女子生徒で思春期が始まり、急に成長をしたり、初潮が始まる生徒もいます。この学年では、身体の健康が一つの鍵となります。
  • 小学校高学年でのつきあいはグループ内での自分の立場によって支配されるようになります。自分の学業成績を客観視できるようになり、通常、それは、学生の間、続きます。

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【中学生の認知発達】

  • 中学生(7年生ー9年生)になると、生徒は抽象的・体系的に、仮説を立てたり、推論できるようになり、認知スキルは質的に変化します。思春期を経て身体が飛躍的に成熟します。
  • 自分の仲間との付き合いが深まり、同性の友人グループを作り行動するようになります。服装や外見に対する個人の好みやアイデンティティが芽生え、人目を意識するようになります。
  • 自分らしさ(個性)が現れ、周りから見られている自分のイメージを意識するようになります(例: 活発、人気者、変り者など)。
  • 男子生徒と女子生徒の違いが現れ出します。学業においても女子生徒の数学と理科の成績が男子生徒に比べて下降し始めます。

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【高校生の認知発達】  

  • 高校生(10年生ー12年生)になると、大人と全く同じ、抽象的な理屈で考えるようになります。
  • 一部男子を除き、身体的にも完全に成熟します。
  • 引き続き仲間との関係を重視し、個人的な親しいつきあいに興味を示します。
  • 仲間になるグループは社会的・経済的地位と関連し、将来のことを考え始めます。
  • 感情的・心理的に激変しやすく、まれですが、摂食障害、統合失調症、うつ病などの身体の不調を訴える生徒もいます。

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