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女性のワークライフバランス

【自分の期待に答えるワークライフバランス】
私は2006年から、企業における女性活躍促進の支援を開始した。世の中は、私が新入社員だった1985年とは大きく変わった。社会も企業も女性の社会進出を応援し、子供を生んでも働き続けることを奨励している。また、企業は、女性管理職比率を上げるために、女性が管理職を目指すことを奨励している。働き続けたい女性にとって、すばらしい環境が整いつつある。社会全体が女性の社会進出を応援しているのである。この背景には、人口の減少に伴う労働人口の不足がある。一方で、女性には、少子化問題を解決するために、出産も期待されている。

このような時代に活躍する女性たちにとって大切なことは、トレンドに惑わされることなく、自分にとって最も心地のよいワークライフバランスを知ること、そして、それを実現することである。

女性が、法の下の男女平等を実現したのは、今から約60年前の1946年である。身近なところでは、祖母は、結婚出産後に、母は、中学生のころに、それぞれ平等権を得たことになる。法の下での男女平等は実現しましたが、職場においての不平等は制度として存在していた。例えば、定年年齢は、女性のほうが20歳若く規定されていた。また、結婚をすると退職が義務付けられる結婚退職制度が存在していた。

高度経済成長期に、働く女性の数は1,000万人を越える。そして1960年代になり、職場における男女平等の動きが始まった。定年齢格差が是正され、女性の結婚退職制度が廃止される。女性の社会進出はさらに進み、バブル経済の真っ只中、1986年に男女雇用機会均等法が施行される。その後も、女性の社会進出を支援する制度が導入され、1992年には育児休業法、2005年には次世代育成支援対策推進法が制定された。

ところが、職場における実態はどうだろうか?私自身は1986年の男女雇用機会均等法の世代である。当時は、もちろん、1960年代に見られた結婚退職制度は存在していなかったが、結婚退社は、慣習として確実に残っていた。また、女性は、クリスマスケーキに例えられ25歳を過ぎたら売れ残りだから、1日でも早く結婚をしなければならないと、毎日のように周囲からアドバイスをいただいていた。結婚出産後は、働き続ける母親に対する風当たりも強く、「母親が家にいなくて本当に子供がちゃんと育つのか?」と指摘される三歳児神話の根強い時代でもあった。

そういった時代を経験した世代の女性から見ると、現代の女性を取り巻く環境はうらやましい限りです。企業は、女性の管理職への登用も積極的に行いたいといい、育児休暇も1年以上可能。至れり尽くせりで女性の社会進出やワークライフバランスを社会、そして企業が支えてくれようとしている。

一方で、社会や、周囲の人々はなんと無責任なのだろうと思ってしまう。私自身、「子供がまともに育たない」と脅かされながら、働き続けるのは、正直とても不安だった。現代なら、「なぜ働き続けないの?」と言われてしまうのだろうか。

女性の社会進出は、選択肢の一つなので、世の中や周囲の期待ではなく、自分への期待に答えるワークライフバランスを実現して欲しいと思う。

【不確実なワークバランス議論】
近年、私は、大企業における女性の活躍促進支援を行っている。その際に、事務局の方たちから共通に言われるのは、女性の課題は、『覚悟が足りない』、『立ち居地が違う』などというコメントである。選抜された女性たちは、みな優秀で、やる気もあり、真摯に成長することを望んでいる人たちだ。では、私の認識と、事務局の認識の間にあるギャップは何だろうかと調べてみた。

女性たちが、いまひとつ踏み込んで仕事に取り組めない理由の一つに、ワークライフバランスというテーマがある。未婚の女性、あるいは、既婚で子供のいない女性の場合、人生設計における不確実要素があり、これからの人生が定まらないので、キャリアビジョンが描けない、描けても1年後が精一杯という女性たちが多い。そこで、『覚悟』が持てない状態、一歩引いた状態になってしまう、ということがわかった。

不確実な要素が少なくなったこの年齢で、彼女たちを批判することは意味がないので、当時の自分を思い出してみた。すると、不安であった当時のことが思い出されました。誰と結婚するのか?子供が出来たら仕事が続けられるのか?子供が病弱だったらどうするのか?不確実な要素を次々と並べると、見えない未来に対する不安は増大するばかりである。では、当時考えていた私の未来は、どのような現実となったのか?自分のキャリア人生を振り返ると、いくつかの節目が思い出される。節目には、必ず決断が求められた。決断における優先順位やトレードオフは、その時々により変化し、子育ても、0歳と15歳ではまったく別物である。したがって、ワークライフバランスの取り方も必然的に変わる。結局は、人生を歩きながら、未来を作ってきたということになる。そう考えると、不確実な未来に対して、あまり心配しても意味がない。

不確実な未来について不安をつのらせるよりも大切なことは、どのような未来が自分にとって理想なのかを知ることである。全てが思い通りに行かなくても、自分の意志を明確にしていれば、その時々の選択において最良の決定ができるはずである。自分は、なぜ働き続けたいのか? どのような結婚生活を送りたいのか? どのようなお母さんでありたいのか?などについて、自分の意思を明確にしておくことが、いざと言うときの決断に役立つことは間違いない。

自分の人生を振り返り、私が女性たちに提供できるアドバイスは以下の通りです。
◆不確実な未来に対して完全な計画を立てようとしない
◆優先順位やトレードオフは、人生の段階において変化することを知っておく
◆環境のせいにしないために、優先順位やトレードオフを考える際には、何を選び、 何を捨てるのかを明確にすることが重要である

【あなたのワークライフバランスを見つける】
ワークライフバランスは、100人いれば100通りあるバランスの取り方の話だ。欧米の女性リーダーたちにインタビューした際にも、一人ひとりのワークライフバランスは違っていた。ご主人の価値観や職業、家族構成により、さまざまである。しかし、成功している女性リーダーたちに共通なのは、意図と戦略を持ち、自分流ワークライフバランスを確立していることである。そこで、皆さんに質問してみたい。

あなたの思い描く理想のワークライフバランスは、どのタイプですか?
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もし、あなたがワークライフ両立型なら、あなたの理想のワークライフバランスは、どのタイプですか?
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理想とするワークライフバランスが明らかになったら、その理想を実現するために何をしなければならないのか、何が必要なのかを戦略的に考えてみよう。

【ワークラフバランス戦略】
家庭を持ち、子供を育てながら働き続ける選択をする方たちへアドバイスをしよう。あなたの選んだ人生における優先順位とトレードオフを明確する必要性については、不確実なワークライフバランス議論の中で既に述べた。

理想とするワークライフバランスが明らかになったら、戦略的に臨むのは、ワークライフバランスも仕事と同じである。戦略を持ち、行動し、問題が発生したら、次の解決策を講じる。では、ワークライフバランスには、どのような戦略があるのか?

ワークライフバランスには、4つの戦略が考えられる。
◆戦略その1:工夫する
~ 創意工夫で、仕事や家事を効率的にこなす
◆戦略その2:他者を用いる
~ 自分でなければ出来ないことを明確にし、それ以外のことは他者に任せる
◆戦略その3:切り捨てる(割り切る)
~ 何もかも完璧にしようと考えず、重要度の低いものから切り捨てる
◆戦略その4:幸運を祈る!
~ 冗談のようだが、『人を動かす』の著者デール・カーネギー氏も、奨励している

ワークライフバランスの4つの戦略における1と2については、その日が来る前に準備が進められるテーマである。仕事や家事を効率的にこなす方法を自分なりに開発することは今からでもスタートできる。また、他者を用いるという点では、家族、知人、地域の人々などの選択肢の中から、誰の力を借りることができるのかを考えておくことができるだろう。

そして、その日が来たら、割り切ることも覚えながら、計画的に他者を用い、すべての事柄がスムーズに回転するように、マネジメントするということが大きな仕事となる。段取り、手はず、危機管理能力が求められることとなる。これらは、すべて仕事にも通じるスキルである。いい仕事をして、マネジメント能力を上げると、ワークライフバランス戦略の実践にも役立つのである。

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