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変わり続ける時代

文部科学教育通信 2018.03.26掲載

教育大変革期の中、教員には変わることが求められています。AI時代に突入する企業に働く人々も、次々と押し寄せる変革の波を乗り越えるために変わることが求められています。 VUCAワールドに活きる私たちは、どこで暮らしていても、誰もが変わることを求められ、変わり続けることが日常ということだと感じることが多いです。

 

人は変わり続けている

そんな中、教員は変われないとか、若者は変われるけど、年を取ると変われない等という人がいます。しかし、これは単なる思い込みで、正しくありません。私たちはみんな代わり続けています。最近、公衆電話を使う人はいませんし、インターネットに接続する経験がないという人も、少ないはずです。スマホで路線を調べたり、地図を見る人も多いでしょう。これは残念なことですが、信念を着物で過ごす人も、年賀状を書く人も、激減しています。私たちは、誰もが、時代の変化とともに変わり続けています。

 

人は変われない?

一方、突然、教員がプログラミングを教えてください、英語も教えてくださいと言われると、「できません」となり、企業の管理職が、育成のために人を褒めてくださいと言われると、「なかなかむずかしい」という声があがります。多くの場合、これらの変化は、これまで大事にしてきたこと以外のことを求められ、自分が否定されたような気持ちになる。あるいは、未知の世界すぎて、何をどこからどう始めてよいのかわからないので、現状のままでいたいという欲求がでてくるのでしょう。

 

変革プロセスの心理学

私がハーバードビジネススクールを留学したのは、日本がバブルの時代です。当時、アメリカの企業の多くはグローバル競争に負け苦戦していました。その中で、変革の推進が重要な経営テーマとなっており、様々な変革のアプローチが生み出されていました。その中に、心理学の視点で、人が変化を受け入れるプロセスを説明するものがありました。ドイツの精神科医エリザベス・キューブラー・ロスが提唱するフレームを企業変革に活用しています。変化は誰にとっても受け入れることが容易なことではありません。人が身近な人を亡くした際にその悲しみを乗り越えるステップを、企業変革に向かう人々の心の変化と重ねてみると、人々の心理を理解することが容易になります。変化は誰にとっても簡単に受け入れられるものではないのですが、それでも、変わるためには、一人ひとりが、この道筋を通りぬけなければなりません。

 

 

【変革の心理学】

 

グロースマインド

最近では、ポジティブ心理学の発展により、グロースマインドのように、前向きに変わるための心の習慣を幼児期から習得しておくことが大事といわれるようになりました。

グロースマインドは、キャロル・ドゥエック氏により提唱され、グーグルをはじめとする多くの企業で実践が広がり、子育てや教育にも活用が広がっています。困難に直面したり、成長の機会に遭遇した時に、グロースマインドを持つ人は、前向きにチャレンジを受け入れることができますが、フィックストマインドを持つ人は、チャレンジを避けようとし、成長の機会を自分のものにすることができません。変化の時代においては、グロースマインドを持つことがより重要になります。課題に直面した際に、できない理由を探すのか、できる理由を探すのかで、未来は大きく変わります。できる理由を探し、前に進み、時には人の助けを得ながらも、ゴールに到達する成功体験を持つと、それは次の挑戦の勇気になりますから、グロースマインドを持つ人は、ポジティブなサイクルがどんどん回転します。しかし、できない理由を探し、現状維持を選択する人は、次のチャレンジでも、同様に現状維持を選択するため、変化することに対する心の壁はどんどん高くなってしまいます。こうして、変われないことを受け入れてしまうと、変わることが不可能のように思えてきます。しかし、グロースマインドを意識すれば、誰もが、変わることができるというのが、今日の常識です。

 

心理的な安心安全

最近は、企業においても心理的な安心安全な場を創ることが大事と言われるようになりました。20年前には、安心安全というキーワードは、今日のように頻繁に取り翳られることはありませんでした。それだけ安心安全ではないという現実があるのだと思います。同時に、これまで以上に、心理的な安心安全が重要になってきているということを意味しているともいえます。変化の時代に、誰もが変わること、成長することを求められ、ビジネスにおいてもイノベーションが求められます。変わることもイノベーションもどちらも、アクションにはリスクがつき物です。最初から成功するときばかりではありませんが、試行錯誤することで、人は成長するし、イノベーションも生まれます。人々が安心して、建設的にリスクをとるためには、安心安全なスペースが必要であることは間違いありません。

心理的な安心安全には、2つの要素があります。一つは、自分自身が、素の自分を出すことを自分に許可できること、もう一つは、素の自分を出しても、他者が自分を受け入れてくれる安心感です。イノベーションを促進することに情熱を注ぐグーグルでは、心理的な安心安全を実現しているチームでは、誰もが議論に参加し、同等に発言していると言います。そして、このようなチームの方が、誰か一人が牽引しているチームよりも良い成果を出していると言います。

 

教育改革

時代の変化に合わせて教育改革が進む中、教員に求められることが変わり始めています。教員は、現場で子どもたちの教育に責任を持ちながら、同時に、変化を求められるというとても難易度の高いチャレンジに直面しています。この変革が成功するか否かが、子どもたちの未来の幸せを決定付けます。現場には、変化を先取りする教員も、これら始める教員も、抵抗を示す教員もいます。同様に、変化に賛同する親も、批判的な親もいます。この環境の中で、チャレンジを始めるのはとても勇気のいることだと感じます。これから始まる改革が成功するか否かは、教員が心理的な安心安全を感じられる環境を、社会が創れるかどうかにかかっているのではないかと感じています。

 

誰もが変わり続ける時代に、お互いの成長を応援する心を大切にしたいです。

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